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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season3-7 END

   

 迫田 剛。ついに突きとめた犯人。しかし、奥の手を隠し、工事現場という地の利をいかしながら逃走してしまった。

 真っ暗闇のなかを右往左往せずに目的の休憩所までいき、ロッカーから1000万円が入った黒いバッグを抱え逃げる。

 そこに御影が行方を阻んだ。迫田は地下工事現場を、道なき道を、探偵ごときが追走してきたことに驚愕していた。

 ふたりはついに対峙した。逃げることをせず振り返り、御影と面をむけあう。
 こう着状態に御影は勝算があった。

 迫田はまだ、そのことを気づいていない。有利なのは自分だと思い込んでいた。
 すでに仕込みはできていた。

 対話がはじまる。
”御影探偵の推理”を披露し、犯人を屈服させる。御影進化の一瞬。

 ついに決着。

「第三シリーズ完結」

 

 渋谷駅の地下、建設業者の社員が作業に急かされているなか、一人の男は業務を放棄して、電灯もない闇の世界の地下作業現場を、縦横無尽に目印もないのにどう進めばいいか、その道を把握している。

 地下には従業員の休憩所が設えてあり、そこに迫田は追跡を気にしながら急いでもぐりこんだ。
 ブラインドを少し指でずらし後をつけてきた刑事、もしくは探偵がいないか確認する。
「いない、よし」

 迫田は、自分のロッカーの中を漁りはじめた。

「ちくしょう、タイミングがわるかったな。こうもはやく突き止められるとは思ってなかった。侮った、完璧な計画だと思ったのに、くそ!」

 その手には紙袋を掴んだ。中身を確認する。身代金受け渡しのときの上着と黒い帽子、白いパンツ、スニーカーが入っていた。それとその下には現金1000万円が入った黒いバッグが隠されていた。
 それを無造作に引っ張りぬく。紙袋が黒いバッグの角が擦れ、ビリビリと音をたてながら破れた。だが気にせず、紙袋をロッカーにそのままのこして、黒いバッグを抱え、休憩所から飛び出した。

 証拠をそのまま放置したのは、もうバレてしまったからだ。余計な荷物で手を塞ぎたくない。身動きの俊敏性を欠いてしまうのもきらった。
 パニック状態での逃走だが、脳は意外にも冷静に状況を判断していた。
「ちょっとはやいが、退職するよ」

 逃走する黒い影を、御影の眼光が光った。
「いた、あれだ。待て!」

「おいつかれた。なんでだ──」
 地の利がある迫田だが、どういうわけか御影が先手を打ったかのように行く手に待ち伏せていた。

「待てといってんだよ」御影の咆哮は地下の空洞内に反響した。
 御影の聴覚は足音があまりしない迫田の足取りを聞き取っていた。

 あちこちの騒音でひとの足音は、タン、タン、という歩行する足音にたいして、タッタッタッタッ、という走行する足音のため、そのわずかな足取りをずっと聴覚は聞き分けていた。
 驚異的な聴力だった。御影は自分でも驚いていた。

 単独になっている御影。「やべー、あいつってそういえば、睡眠薬入りのスプレーとか所持してたりしてないよな。あれがあったら対抗できないぞ」

 スプレーの噴射は防御にもなるし、一瞬の足止めになる。しかも噴きかけられたら最後、二三秒後には、冷たい地面がベッドになって眠ってしまうだろう。

「それだけはかんべんな。慎重に近づかないと──」御影は体力の続く限り走り、追い詰めようとしている。

 迫田はそれが聴こえないが、一対一なら分があるかもしれないと選択肢のひとつにあげていた。
「どうするか、あいつだけなら、なんとかなるかも」

 黒いバッグの中をガサゴソと漁る。握り締めたのは、やはり御影の恐れていたこと。

「こっちには、あいつひとりなら睡眠薬入りのスプレーがある。すぐにお寝んねだ」冷笑する迫田だった。

 ぼそぼそと御影のくちだけは動いていた。

 迫田は、振り返った。左手でバッグを抱え、右手にはスプレー缶を握り締めて、勝ち誇ったかのようにギラつくような白い歯をみせる。勝機の笑みだ。

 御影もすぐ察知した。だが、スプレーの噴射射程距離に近づかなければ影響はない。間合いをとって、隙を見極める。
 こう着状態にもっていけば御影に勝算があることを迫田は気づいていないようだ。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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