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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode12

   

 魔夜と大雅は、ケンさんの命懸けの覚悟と、陽太の覚悟を知ることになる。

 本格ミステリー!!
 44口径より、愛を込めて

 

「是非、参加させてください!」
 大雅の了解も得ずに、私は承諾した。
「俺、聞いてないっスよ!!」
 先程まで膨れていた陽太君が、突然ありえないと言った素振りで叫んだ。
「あぁ、陽太は仕事が山になってるって聞いてな。敢えて言わなかったんだ。仕事が終わってから、来ればいいさ」
 ケンさんが、今度は陽太君の頭をゴシゴシ撫でた。
 やっぱり、仲良いんだな。
「そ、そうじゃないですって!! 張り込みの事っつ!」
 ケンさんは、あぁっと漏らして続けた。
「今朝、タレコミがあったばかりなんだ。明日晩、お前は別件で出なきゃいけないだろ」
「誰と行くんですか?」
「あいにく誰も空いてなくてな。私一人だ」
「危険過ぎます!」
 陽太君が机を両手で叩き、そのまま立ち上がった。
「陽太、落ち着け!」
 ケンさんの言葉も無視して、陽太君は鼻息荒く捲し立てた。
「こっちは、三人。俺、ケンさんに付きます!!」
 陽太君が言い終わるが早いか「ダメだ!」と言うケンさんの言葉が被せられた。
「なんで?」
「お前が受け持っている件は、お前が主任だって事を忘れるな」
「…………」
「本来なら、無罪放免で終わっていてもおかしくない件なんだ。私が今までの実績で、なんとか繋いでいる事件。もし白なら、私は会社を辞める覚悟でいる。そんな状況に、お前の信頼を失わせてまで手伝わせるつもりはない」
 陽太君が、座り直した。
「……悔しいですよ……なんか、結局、俺……蚊帳の外じゃないですか」
 ケンさんが、今度は優しく陽太君の頭を撫でた。陽太君が涙ぐんでる様に思えたが、私達は敢えて見えないフリをしていた。
「陽太。お前は、よくやってくれてるよ。だけど私は、陽太を子分にする為にマトリにしたわけじゃない。お前には将来をもっと大事にしてもらいたい。私は、命を掛けてもこの事件の真相を暴きたい。だから、家族がいながら将来を捨てた。出世の道を。最低の亭主だ。だが、お前は違う。出世し、家族を持って、幸せに生きるんだ」
 四人の間に、静かな沈黙が流れる。私はすっかり冷め切った珈琲を眺めながら、とうにお昼の時間が過ぎていたことに気が付いた。
「……でも……やっぱり、悔しいです……」
 ポタリ、ポタリと、必死に堪える陽太君の目から、堪えきれなかった涙がこぼれ落ちた。
「俺は、ケンさんに憧れて、この世界に入ったんです。貴方の力になりたい。ずっと、それだけを胸に頑張って来ました。だから、俺みたいな馬鹿でも、あんな有名大学の法学部を卒業出来たんです。内定が決まった時、夢が叶うって……嬉しかった」
 居た堪れなくなったのか、大雅が席を立った。キッチンに向かったので、お昼ご飯でも作りに行ったんだろう。
「泣き虫は、変わらないな」
 ケンさんが呟くから、陽太君は「泣いてなんかいません」と、強がった。
「あのう」
 この感動的なシーンを、ぶち壊す覚悟で私は発言した。
「そんなに危険な張り込みに、一人で行くのって、やっぱり危なくないんですか? 何の事件か解らないけど、命を捨ててまでやらなきゃいけない事件て……上手く言えませんが、残された人の事を、ケンさんこそもっと考えるべきなんでは?」
 ケンさんの姿勢が、陽太君から私へと向き直された。私はとんでもない事を言ってしまったような気がして、土下座して詫びようかと正座した。
「魔夜ちゃん」
 私は、ごめんなさいと叫びながら土下座した。
「……謝る必要はありませんよ。頭を上げてください。魔夜ちゃんの言うことは、正論だと思います」
 頭を上げると、キッチンからトマトを煮込む甘い匂いが鼻孔を擽った。
「坂下と賢木田と大量虐殺事件の関係性の件です。警察では、坂下と賢木田は証拠不十分の為、事件ともヘロインとも無関係と発表されました。しかし、私はどうしても坂下と賢木田が、直接でないにしろどちらにも関係しているような気がしてならないのです。何故なら、第一次で犯人グループが一網打尽にされたのにも関わらず、第二次として同じ事件が起こってしまった事。どちらも同じタレコミだったこと。ヘロイン流出には、現在進行形で全く変動ない事。ヘロインの売人数名が、賢木田の組員だったこと。これだけ疑わしい情報があるのに、証拠不十分で片付けてしまうのには納得がいかなかった。それから……」
ケンさんは、数秒置いてから続けた。
「第二次コーラカル・アヂーン大量虐殺事件で、私の妹が殺されました。妹のお腹には、子供もいました。今のままでは、第三次が起こる可能性も考えられる。それだけは、何がなんでも避けたい。そして、妹の身体を司法解剖をした結果、僅かですがヘロインの成分が検出されました。そこで妹の家を調べましたが、ヘロインに関するものは全く出てきませんでした。親しい友人や交流場所など、考えられる場所も調べまわりましたが、何も出てきませんでした。何かが、おかしいのです」
「…………」

 

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