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ミステリー

見習い探偵と呼ばないで! Season4-2

   

「あのー」事務員の科宮が呼びかけた。雑談している探偵たちが黙った。

「どうしましたか?」小柴がこたえる。

「いえ、御影くんにお客さんです」

 御影は驚いた。「おれに客?」首をかしげる。なんの予測もつかない訪問者がいったいだれだというのか。

「こんにちわ」すがたを見せる女の子に見覚えはとうぜんあった。さっき青い空にむけて“おめでとう”の言葉をかけたのだから。

「栗原さん」御影は思わぬ人物の登場に大声でその名をいった。

「たしか、栗原って、教習所の“通い女神ちゃん”じゃないの?」水桐は浮いた話が好きだった。いまは御影の話題に沸いている。

「そうだったな。“雑念の女”だ」森谷がいった。年甲斐もなく揶揄するのは、やはり御影が一発で免許取得できるはずだったのを阻んだ小悪魔だと思っている。

「なんか、大地さんみたいな印象だな」川上が大地と交互に見比べていた。

「え、わたしってあんな感じですか?」大地はすっとんきょうな顔で驚いた。

「ほんと、どちらもお子さま」水桐は、ふたりの大地にむけていった。

 大地はむすっとしていた。

「でも御影くんはなんであんな子に心を沸いたのかしら、大地ちゃんでいいんじゃない」

「水桐さん、その適当な感じで恋愛相手を決めるのはやめてください。わたしだって選ぶ権利あります。御影くんは好みではありません」大地はきっぱりいった。

「そう、ごめんね」おもわぬ圧に引いていた水桐だった。

 ちらっと小柴が冷たい視線でみるが、意識は蚊帳の外だった。

 御影は栗原と話す。「どうしてここが?」

「ごめんなさい。あなたが前回落ちたから、話ができなかったけど、どうしても話たいことがあって──」

 御影は思わぬ告白前の緊張感に晒された。周囲もざわめいていた。

「な、なにかな」御影は照れくさそうに頭をかいた。

「あなたが二度目の本試験を受けにくるまで、府中駅で待ち伏せしてたの。いつくるか現れるかわからないけど、本試験のスケジュールは決まっているから、すがたを見つけるのは日程があえば確実に会えると思った。それでやっときょう会えた。試験が終わってから話そうかと思ったけど、やめたの──」栗原は周囲のひとの目を気にせず、前置きの長い告白までの経緯を話す。

「そうか、でもどうしてやめたの?」御影は会話の穴埋めに言葉をかけた。

「あなたが、探偵だから」栗原はいった。

 その瞬間、探偵だということを明かしてしまったことを周囲のみんなにしられてしまった。

 御影は凍りついた。

 小柴のレーザー光線のような凍てつく視線が刺さっている。
 探偵や事務員の目も吹雪きのように御影にむけてあきれたようにくちを開けていた。

「いや、それは、そのー、“つい”ね、いってしまっただけで、でもそれがきみになにか関係があるの?」御影の苦し紛れの言い訳を聞く耳はない。

「はい。探偵なら、わたしの依頼をきいてもらえますか?」栗原は探偵として依頼をしにきたのだ。

 御影は安堵した。これで自分が探偵だということを明かしたことは、うやむやになるぞ、と。

「では、依頼をわたしが聞きましょう」御影はすっかり名探偵気取りで、顔見知りの依頼人から内容をきく。

 

≪つづく≫

 

-ミステリー

シリーズリンク

見習い探偵と呼ばないで! Season4 <全7話> 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話

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