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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

『蒼色推理』−雪銀館事件− 第四章「雪密室の謎」 2の2

   2015年10月29日  

続いて、小塚の死体を調べる蒼野たち……。
蒼野はある閃きで、大時計室へ向かった。
足元が危ない時計台のところで、蒼野は何をしているのだろうか?

 

もう一体の死体を回収しに、俺たちは玄関へ向かった。
こちらは玄関入口の外側といっても、ほぼ館内で行なわれた犯行だろう。それに密室内でもないし、雪密室は関係ない。大江戸先生殺害のトリックよりも難易度は低そうだ。俺はそれだけに犯人の大江戸先生に対する深い恨みを感じる。
俺は古山警部に最初に発見したときの現場状況を説明し、その際に携帯で撮った現場の写真をディスプレイ越しに見せた。
古山警部は状況を瞬時に把握できたらしく、小塚先生の死体を調べ出した。
「ううむ。そうですね、死因は頭部の打撲ですかな。小塚先生は、犯人によって頭部を後ろから殴られていますね。その打撃によって一撃で死亡した可能性があります。もしかしたら、一応、館外部で死なれているので、打撃を受けた後、気を失って凍死したのかもしれません。それは解剖してみないといまいちわかりませんね」
一撃の打撲で死亡した? それほどまでに犯人の腕力は強いのか? 先ほどの剣で一突きの件も同じく力が強かった。だとしたら、まず、犯人は男だろう。俺は犯人をさらに特定するために利き腕を聞いた。こういった打撲の犯行では、殴り方で右利きか左利きかがわかるので、その利き腕によって犯人の特定に近づくことができる。
「利き腕はどちらでしょうか?」
「いや、それが、この殴り方だと右利きか左利きかはわかりません……」
そうか。それは残念だ。
それから凶器。
「あれ、古山警部。凶器がまた見当たらないようですが?」
俺たちは現場をうろうろしながら凶器を探していた。
「また凶器はなしですか。犯人は現場に全く証拠を残さないことにこだわっているんでしょうかね?」
「さあ、今の時点ではわかりませんね。だけれどおそらくそれが犯人のトリックの一部であることに間違いはないでしょうね」
あと、大事なことだが死亡推定時刻だ。
古山警部は俺が言うまでもなく、死体をしばらく調べた後、教えてくれた。
「こちらも解剖していないので詳しくは言えませんが……。死亡推定時刻は、午前零時頃ですね……」
え? 今、何と? 死亡推定時刻が午前零時ぐらいというのは、大江戸先生の殺害時刻と同じではないか。
「奇妙ですね。大江戸先生の死亡推定時刻と一致しているとは。しかし、死亡推定時刻ってずれるときがありますよね? 何かの間違いで大幅なずれがなかったときでも、五分十分はアバウトなときがありますよね?」
「ええ。そうですね。まさか犯人は全く同一の時刻で殺害したということはないでしょうね。館の中庭の部屋と玄関ではそれなりに距離が離れていますからね。おそらく、どちらかを先に殺した後、もう片方をすぐに殺しに行ったのでしょうね」
古山警部のその応答の後、双馬さんはポンと手を叩いて提案した。
「先生、わかりました。犯人って二人いるんじゃないですか? 一人が主犯でもう一人が共犯。二人いれば同時の殺害時刻でもおかしくはないですよね? それに二人もいれば、さっきの雪密室だって何かを分担して完成させたんじゃないですか?」
彼女の提案はもっともだとは思う。俺もそれはさっき考えていた。
「ああ。その可能性はあるかもね。しかし、何のためにその二人は犯行時刻を同じに合わせる必要があるんだろう? それに厄介なのが、アリバイだよね。誰と誰が犯人であって、アリバイが崩れるのだろうか。あの状況ではかなり無理があるな……」
俺は小塚先生の死体を発見した先ほどから気になっていたことがあった。
先生の足下の下敷きになっていたこの魔法陣だ。古代魔術の紋章は妖しく輝いているかのように見えた。
俺は恐る恐る、魔法陣に手を触れた。
何ともなかった。
「あれ? 先生、それ何ですか? 魔法陣ですかね?」
「ああ。見るからに魔法陣だね。そういえば、脅迫状の第三の犯行予告は「死霊術」だったね。この魔法陣と何か関係があるのかな?」
俺は小塚先生がここまでどうやって連れてこられたのかはわからなかったが、弱い日差しがケルト・ルネサンスの彼方から差し込んできたとき、何となく殺害方法がわかったような気がした。
俺と古山警部で小塚先生の死体を俺の部屋のバスルームまで運んだ。古山警部は、死体の解剖にとりかかりますので、私はここまでで、と別れた。
「先生、どうしましょうか。もう犯行現場は全部見ましたよね?」
「いや、まだ十分に見てはいないよ。今から大時計室へ行こう。そこに何かあるはずだから」
双馬さんは不思議そうな顔をしていたが、俺たちは大時計室へ向かった。

 

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