幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

『蒼色推理』−雪銀館事件− 第四章「雪密室の謎」 3

   

蒼野は、食堂で執事の黒井にあることを確認した。
その後、死体となった小塚から携帯電話を拝借する。
「死霊術」とやらの答えが見えてきたようだ……。

大江戸正宗&小塚の死亡推定時刻についても、古山が正確に割り出したらしい……。
だが、食堂からは、「ある物」が消えていた……。

 

 
 俺たちは大時計室を去り、食堂へ向かった。
 食堂では黒井さんと弟切さんが朝食と応接間の片付けが済んだらしく、紅茶を飲みながら談話していた。
 食堂にいた二人は俺の手から血が滲んでいるのを見て驚いた。
「おい、蒼野の旦那。どうしたよ、それ? 犯人にやられたか?」
「蒼野先生。直ちに手当てをしますので、少々お待ちくださいますか」
 黒井さんがキッチンの奥から絆創膏と消毒液を持ってきてくれて、俺の手当てをしてくれた。
「いやあ、すみません。黒井さんに弟切さん。犯人にやられたわけではないのですが、犯人のトリックを暴くための証拠を探していてこうなったんです」
 ところで……と俺は切り出した。俺がここに来たのは、手当てのためではなくて、初日に起こった毒入りワインのトリックを暴くためだ。
「実は、昨晩、一晩中、毒入りワインのトリックについて考えていました。それであることを思いついたので、その確認を取るためにここに来ました」
「はあ? どういった確認でしょうか?」
「黒井さん。昨日のパーティがあったときの料理のリストってありますか?」
 ええ、リストを作られなくても覚えていますよ、と黒井さんは食堂にあったメモ帳にすらすらと料理の名前を書き連ねた。
 俺はそのリストを見て、もう一つ足してもらいたいものがあった。
「黒井さん。もうひとついいですか? もしかしてこのパーティのときって、誰が何を食べたいかのリクエストってありました?」
「ええ。ありましたよ。うちでパーティをやるときは、いつも皆様が食べたいものをリクエストしてパーティ料理を作るようにしていますので。蒼野先生にも事前に電話で確認したはずですが?」
 そうだった。俺は今、それを思い出した。二週間ぐらいまえに電話がかかって来たよな?俺はそのとき仕事が忙しくてそれどころではなかったので、適当でいいです、と答えたんだ。
「すみませんが、誰が何をリクエストしたかをこのリストに書き込んでもらうことはできますか?」
「ええ、覚えている限り書きましょう」
 黒井さんは以下のようなリストを作ってくれた。

クリーム蟹コロッケ……大江戸先生
ダブルチーズピザ……夢倉様(弟切様)
味噌ラーメン……宮沢先生
鶏手羽先の塩焼き……小塚先生
牛肉の赤ワイン煮込み……水波先生
エリンギとホタテのさくさく照り焼き……奥様
パンプキンスープ……奥様
ゴルゴンゾーラパスタ……私
ポテトとツナのサラダ……私
ガーリックバターライス……古山様
焼きプリン……双馬様

 なるほど。思っていた通りだ。
「ああ! パーティなのに味噌ラーメンなんてリクエストした人いたんですね」
「宮沢先生は味噌ラーメンが大好きなんですよ」
「いや、そんなことは、今はどうでもいいよ」
 あることが気になっていた俺は、双馬さんと黒井さんに冷たく返してしまった。
「ハハハ。俺、ちゃっかりピザなんてリクエストしたんだぜ。手が込んでいるだろう? まさかこのときは俺が偽物だったなんて誰も思わなかっただろうな」
「そうですね。あのときはすっかり騙されましたよ」
 ハハハ、と弟切さんと黒井さんが打ち解けている姿を見て少し驚いた。
 まあ、いいや。これであることがわかった。
 俺はキッチンへ向かい、その証拠となるある物を探した。
 しかし、それは、犯人によって既に処分された後だった。
 しまった……。抜かりのないやつだな。だが、他の証拠品がまだある……。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


コメントを残す

おすすめ作品