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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

『蒼色推理』−雪銀館事件− 第四章「雪密室の謎」 4

   

次第に見えてきた事件の全体構造……。
そこで意外にも、宮沢監督が蒼野を呼び出した……。
淡々と忌(い)まわしき過去を語り出す宮沢……。
自分を犯人から守ってくれ、と必死になる宮沢だが、蒼野は事件の謎が解けたらしい。

 

 
 俺たちは一仕事を終えて食堂へ向かった。
 食堂に残った二人は昼食の準備をしていた。
 古山警部は一服していた。
 あれ? もう一人珍しい人がいるね?
 宮沢先生が紅茶を啜りながらぽつりと座っていた。
 俺は懐中時計を取り出した。
 午後一時三十分。
 もうそんな時間か。事件に熱中していたら、時間が経つのが早いね。
「蒼野の旦那。もうじき飯ができるから、その辺でくつろいでいてくれ」
 キッチンから弟切さんの声がした。
 俺と双馬さんはラウンドテーブルの一角に腰をかけて昼食を待った。
「さあさあ、できましたよ。今度は冷めないうちに召し上がってくださいね」
 黒井さんがサンドイッチを運んできてくれた。
 ハムとエッグのサンドイッチ、トマトとチーズのサンドイッチ、ブルーベリージャムのサンドイッチ。おや、サンドイッチのオンパレードかな。
 さらに弟切さんは皮を剥いたフルーツも持ってきた。りんご、オレンジ、白ブドウだ。
「あ、そうだ。これ、絵描きのおねえちゃんにも持っていった方がいいよな? 部屋で仕事しているだろう?」
「そうですね。弟切さん、後で私が持っていきますから、少しだけこのプレートに盛っておいて貰えませんか?」
 黒井さんは俺たちの方を向いてプレートを勧めてくれた。
「たいしたものは出せませんが、腹ごしらえにはなるでしょう」
 黒井さんの何気ない言葉が気にかかった。
 もしかしたら、食料がだんだんと尽きてきているのかもしれない。
 昨日、大江戸先生に案内された倉庫にはまだまだ食材があったので、気のせいかもしれないとも思った。だけれど、もし、今晩、また天候が悪くなり、警察が迎えに来られなくなり、泊まる日が続いたら……。俺は嫌な想像を、首を振って追っ払った。
 疲れていたせいか、腹が減っていたせいか、俺は黙々とサンドイッチをほお張り、フルーツにかぶりついた。
「先生。そんなに欲張って食べなくても……」
「いいじゃないか、双馬さん。腹が減ったら推理はできないよ」
 そんな俺たちのやり取りを遠い目で見ていた人がいた。
「宮沢先生。顔色が青いですね? 気分が悪いんですか?」
 宮沢先生は自分が俺たちを見ていたことに気がつかれ、はっとした様子だった。
「……。蒼野さん。後でお話できますか?」
「え? 話って何の話ですか?」
「……。事件の話です……」
「ええ。構いませんけれど」
 食事が終わると、俺と双馬さんと宮沢先生は応接間へ移った。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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