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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season4-4

   

 御影と川上は、福留を大阪まで尾行する。行動の逐一をメールで栗原に報告する。

 だが妙な感じに思えてきた。福留に女の影は微塵も感じない。たしかに企業への訪問はしているが、福留の過ごし方は、高級ホテルに宿泊している。
 女が出入りしている気配はない。

 栗原が抱くような浮気癖のあるタイプには思えない福留の生真面目な行動に、御影、川上は不可解さを抱きはじめた。

 川上は東京にいる探偵に電話をかけた。水桐探偵にだ。森谷もその場にいたため、両者に相談する。

 東京にいる栗原はこの間、なにをしているか探ってほしいと。

 そして御影もなにか不可解な疑念を頭のなかで浮かんでいた。

 想像から発想と体感からの目の解釈から、見えてしまった疑惑。

 いまでは御影の能力は、探偵事務所でも認めはじめている着眼点だった。

 

 一時間後。

 これといった収穫もあやぶむ行動は見受けられなかった。と、御影から川上にメールで報告があった。

「そうか。なら依頼人にもメールで報告することよろしく」川上は返信した。

 御影は了解と返答してきた。

 福留は新幹線内では安眠をとっているように座席でずっとしずかに微動だせずに休んでいた。

 一両後ろに座席になってしまった御影だったが、たまに後方の、のぞき窓から福留のいる車内をうかがう。

「つまんねー男だな。浮気の疑惑がある男の行動には思えない。これから仕事のために体力温存って感じだよな。思考がそう思える。おれでもそうする。いまは自由に動けるんだからもっとアグレッシブにスマフォいじったり電話したり他者と連絡を取るものじゃないのか。これは、いや、いまはそうすべきことか。月曜のまだ朝だしな」

 御影は10分に一度席を立ち、前車両にいる福留の監視をしていた。
 たびたび川上からメールが入る。御影も返す。キャリーバッグは勝手に動くことはないから、車内にいることはわかっても、人間の行動まではわからないため現状に不審点がないかの確認だった。

「うっせーな、たくっ。なんかあればすぐに連絡するに決まってんだろって」御影は川上、そして栗原にも報告しなければならないことに、うざくなっていた。

「ああ、めんどくせー」

 職務怠慢である。

 大阪駅で降りた福留だった。

「やはり大阪駅まで来たか」御影も降りた。

 福留はすぐに訪問先の関連会社を回っていた。

「えらいじゃん、ほんとうに働いている。優秀なのかもな。ひとりで企業に回って営業している。二年目にして独り立ちしてすべてを任されるほどか、だから赤坂の高層マンションに住めるわけだ」

「そうとも限らん」川上がきた。御影が大阪駅に着いてから6時間は遅れての到着だった。

「はやかったすね」

「まったくだ。いがいと早く着いた」

「とはいってもおれはひとりで飯食いましたよ」

「おれは──」川上はいった。「まだだ」

「いまさっき彼はここの会社にはいったからいってきたらどうですか?」

 近くに吉野家があった。

「おお、たのむわ」

 御影は自動販売機をみつけると缶コーヒーを買って、福留がでてくるのを待った。スマートフォンで位置情報だけは逐一目を通してた。

 15分後。川上がもどってきた

「はや、もう少しゆっくり食べてだいじょうぶなのに」

「そうもいってられない。どうやってでてくるかわからないからな。もしかしたら車で移動や、こちらの表通ではなく裏からでる可能性だってある」川上はいった。「それにだ」小声に変わった。「尾行というのは簡単そうでいがいとむずかしい。景色に同化しないとならない。相手に気取られた時点で尾行は失敗になる」

「それはそうだけど──」御影は異論を唱えようと思うも、言葉が出てこなかった。

「それに大阪という不利な立場だ。地の利がおれたちにはない。ここだってどこかよくわからん。尾行はつねに後手にまわる。それを考えながら先手を打てる算段を思案しておかなければならない」川上が教鞭する。

「さすが、ベテラン尾行師だけの発言は“ため”になるね」御影はうなずく。

「そうか」川上は誉められると機嫌がよくなる。まんざら嫌いではないようだ。

 

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