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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

『蒼色推理』−雪銀館事件− 第五章「雪密室の氷解」 2の2

   

続いて、小塚殺害トリック、大江戸正宗が殺害された雪密室を蒼野は鋭利な推理で解明して行く……。追い詰められて行く犯人は、降参するのか?

 

 
 俺は続けた。
「毒入りワイン事件のどさくさで、次の小塚先生殺害のための準備をあなたはしていました。この騒ぎに紛れて、小雨さんの死体から小雨さんの携帯を抜き取ったのですよ。
 なぜか? 脅迫状の三番目の殺人予告である『死霊術』のトリックを実行するためです」
 俺は水波先生の方を向きながらさらに続けた。
「俺は小塚先生がどうやって犯人に呼び出されてどうやって殺されたのか最初はわかりませんでした。だけれどケルト・ルネサンスの日差しの眩しさと偶然俺の携帯に来たメールのお陰でそのトリックがわかってしまった。
 あなたは小雨さんの携帯から小塚先生の携帯に脅迫状のメールを打った。午前零時に玄関外入口の魔法陣のところまで来いと……。ちなみにこのとき小塚先生が玄関の扉を閉めていたようだったので、彼の死体の発見が後に遅れた。
 このトリックこそ確率犯罪だったかもしれない。あなたは午後十一時半頃に俺たちと一緒に応接間にいながら、外の天候を確認しつつ、吹雪が止んできたので、小塚先生にメールを打った。このときは天候が計算通りに動いてくれたので、偶然にもトリックを発動させることができた。もしできなかったとしても、あと二日残っている状態ならば、またお得意の遠隔殺人トリックを館のどこかに仕掛けて、この手のメールを送り、誘い出し、殺す予定だった……」
 俺は小塚先生の携帯に映るそのメールを見ながら話を続けた。
「そして、予定通りに事は運び、その地点まで小塚先生を誘き出した後は、午前零時になれば大時計から自動的に雪球が真下に落下するように細工をした。これで小塚先生を撲殺するか、あるいは気絶させて凍死させることができた……。ちなみに初日に確認済みだが、建築の構造上、玄関入口には屋根がなかった」
「なるほど。それで蒼野先生は大時計室まで行って、あんな無茶をしていたんですね?」
「そう。俺は大時計室にトリックを確かめるために向かった。
 この細工を作るときに、まず大時計の長い針を動かないように固定する。短い針にはブラシで水を薄く塗り、厚みを増さして、もともと角度が鋭い針の表面をさらに切れるようにした。長い針には黒い木綿糸をぐるぐる巻きにつけて、雪球をこの糸で縛り針の裏側に隠した。零時になり、二つの針が重なるときに、短い針が長い針の糸を切れるようになって、雪球は落下する。このとき魔法陣はそれが落ちる位置の目安だった。
 小塚先生は後ろから誰かに殴られて、打撲で死んだように見えたが、実際には真上から落下してきた雪球で死亡。だから力があるないは関係がない。それに凶器である雪球は周囲の雪に溶け込み、凶器は消失してしまう。だからこのとき凶器は見つからなかったし、先生の死体には争った跡がなかった。また雪が凶器なのでここなら凶器の調達も楽だった。
 もっともアリバイに関しては、機械仕掛けの自動トリックなので、アリバイなんてあってもなくっても同じだ。
 ちなみに時計は細工のせいで壊れていても、外にあるものだし、普段は気にしないものだから、誰も気がつかない盲点だった。俺も初日にここに入館するときに、大時計の時間が遅れていることに気がついていたが、たいしたことではないと思い放っておいた。今思えば、あのとき長い針が12を指したままだったのは、トリックを仕掛けているときだったからだが……」

 

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