幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

レギュラー・バット(後)

   

「レギュラー・バット」の力によってレギュラー入りを果たした高野を擁する文武大学硬式野球部は、組み合わせに恵まれたこともあって、大会で快進撃を続けていく。

高野もまた、何本もホームランを放つなど、今までの野球人生の中で最高の結果を出した。

だが、ドラフトで指名が確実視されている剛速球投手、石崎と対戦する段になると、もはや勢いだけではどうすることもできず、七回までパーフェクトに抑えられてしまう。高野もまた、まったくなすすべなく三振してしまった。

すると、国田が、「オリジナル」のバットを貸してくれと言い出した。

つまり、「レギュラー・バット」を使ってでもホームランを打って追いつきたいと言っているのである。このまま敗北してしまえば、もうドラフトまで自分を売り込めるチャンスはない。プロに入るためなら勝つしかないということだ。負けたら「最後」である。そうした事情は高野もまた同じだった。

高野は「レギュラー・バット」を国田に託して結果を見守ることに。

試合の結果は? そして、「レギュラー・バット」の正体とは?

 

 高野が秋季大会のレギュラーに選ばれてからの一月は、彼の大学四年間の中で、いや、野球人生すべてを通じても、もっとも活躍した時期だった。
 エントリーした全部のチームが公平に振り分けられるという条件下で、文武大学野球部が、中学校の野球部と対戦するトーナメントの山を引き当てたことが、チームと高野の快進撃の始まりだった。 強豪ではないとは言え大学三、四年生を中心とした打線であるから、中学生チームを圧倒することなど難しくない。
 特に主砲の国田が、ほぼ確実に真芯で捕らえられるバットを持ってフルスイングするのだから、結果は明らかだった。
 九番指名打者に据えられた高野は、国田にホームランを打たれ気落ちする投手の球を思い切り叩くだけで簡単に塁に出ることができた。
 二回戦から四回戦までも、楽な相手だった。エントリーチームが膨大な上にシードが設定されていないため、この大会では時折こういうことが起こる。
 国田と高野はヒットを量産し続け、大いにチームに貢献した。もっとも、他のレギュラーも控え選手も、打席が回ってくるなり最大限にその力を発揮してはいたが。
 高野たちがヒットを打ち続けていることで、他の選手もバットを変えたがった。
 ダメ元で酒井に連絡してみると、抜け目ない彼はこうなることを予想し、既に何本ものバットを仕上げていた。
 さすがに全選手に行き渡らせることはできなかったが、規格がまったく同じなため、使い回していくことができたのは幸いだった。
 羽子板のような幅広のバットから繰り出される鋭い単打は、相手のエラーを誘発させ、結果として何本もの長打を打っているのと同じほどの破壊力となっていった。
「いやあ、今日も載ってるぜ。『スーパーバット集団 ヒット量産、秘密は職人の手作りに!?』だってよ。気分がいいよな」
「俺なんか写真まで載っちゃったぜ。内定先に見せたら総合職の方に回して貰えたりしねえかな。へへへ」
 となると、物珍しさもあって、マスコミの注目も集まってくる。 四回戦を勝った時点で、高野たちは何度もスポーツ紙に取り上げられるほどの扱いを受けるようになっていた。
 プロ野球がオフシーズンということも作用したのかも知れない。

 

-ノンジャンル


コメントを残す

おすすめ作品