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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode18

   

 ケンさんの死因について、殺人事件を疑う魔夜であったが、病死として告げられる。しかし彼女は納得ができなかった。

 本格ミステリー44口径より愛を込めて!!

 

 私達を乗せた車のヘッドライトに、時折小さな影が差す。雨だ。大雅が、ワイパーを動かした。昼間は、嫌味なくらい晴れていたのにな。
「魔夜は、怖くないの?」
「え?」
「……もういいだろ……」
 消え入りそうな声で、大雅はそう言った。
 翌朝、一昨日と同じように大雅の目は腫れていた。多分、昨晩も泣いていたんだろう。ケンさんには、私がお世話になる前から、大雅は世話になっていると聞いた。大雅にとってのケンさんの存在は、私の中のケンさんよりずっと大きいものだろうし、もしかしたら私の存在よりずっと大きかったのかもしれない。今の私に出来る事は、気付かぬ振りぐらいだ。
「今日は、日差しが強いね」
 私がそう言うと、彼は「うん、そうだね」と返事した。
「今日はサングラスが必要よ」
 今度はそう言うと、彼はまた「うん、そうだね」と返事した。
 外は、昨晩からの雨がしとしとと降っている。
 大雅が玄関を開けると、丁度陽太君が家の前に到着した所だった。彼は車から降りるなり、サングラス姿の大雅を見ながら大声を張り上げた。
「大雅さん、どうしたんですか?」
「……イメチェン」
 陽太君は、大雅のあしらう様な態度に気を悪くする風でもなく、ただ表情だけ嫌味っぽく笑って見せた。
「イメチェンでしたか!! あははー! 俺はてっきり泣いて……」
 大雅のボディーブローによって、陽太君の言葉は遮られた。
「ねぇ、何でそんなに仲悪いの?」
 お腹を押さえて蹲る男に問いかけた。
「仲悪く見えます?」
 改めて聞かれると、返事に困る。
「…………」
「喧嘩する程、仲が良いんですよ。別に良くないけど」
「どっちなの?」
「嫌いじゃないんですよ。でも、嫌なんですよ」
 はっきりしない。
「もう、いいじゃないですかー。そんな事ぉー」
 今度は甘えた様に、唇を尖らせながら膨れて見せた。お前は、一体幾つだ。
「そんなことより」
 彼は“よっこいしょ”の代わりに言いながら立ち上がり、左手に持っていた小さめのスポーツ用バッグを差し出した。受け取ると、ずしりとした重さがあった。
「返却分です」
 ファスナーを開けて覗くと、中には拳銃二丁と予備の弾倉が一つ入っていた。
「ケンさんが発見されたとき、所持していたものです」
 陽太君の言葉に、私の目から涙が溢れてきた。滲む視界で真っ直ぐ前を見ていられなくなり、俯くと同時に倒れそうになった。
「今度は、俺が支えますよ」
 陽太君に支えられながらも泣き声を押し殺すのに精一杯で、暫くの間、私は一言も発せられなかった。
「……大……丈夫……だ……から……」
 ようやく出せた言葉がコレ。どうせなら、素直に“ありがとう”と言いたいものだ。
「こんな時ぐらい、思いっきり甘えて欲しいんですけど。俺の立場ないじゃないですか」
 真顔で言うから、思わず笑ってしまった。火葬場での事を、言っているのだ。
「もう充分、甘えてますよ」
 陽太君の胸を軽く弾くように押して、私は体勢を立て直しながら一歩後退した。
 再び、バッグの中身を確認する。HK-P7M13とSW-M329、確かにケンさんが張り込みの日に持って行った銃二丁だ。
 私は、私が押し付け、見事役立たずに終わったSW-M329を手に取った。SW-M329とは、スカンジウム合金製フレームとチタン製シリンダーを組み合わせた軽量型四十四口径回転式銃である。護身用になればいいと、2.5インチサイズを選抜して渡したのだ。シリンダーを開けると、弾は私が詰めたままになっていた。
「M329は足首のホルスターに、P7M13は腰のホルスターに装備したままになっていたそうです。壁にゆったりと座り込んだ体勢だったと。死因は、急性心筋梗塞による、呼吸困難」
 私は、一度だけ頷いて見せた。
「じゃぁ、俺仕事に戻りますから。何かあったら、電話してください」
 陽太君は、軽く右手を上げて車に乗り込んだ。私は車が走り出すのを待たずに、室内に戻った。そのまま自分の部屋に入り、作業台の上にバッグの中身を並べた。
 予備の弾倉を確認後、弾の検品作業。特に異常は見当たらなかったので、弾はケースに片付けた。今度はP7M13のマガジンを外し、弾倉を確認後、弾の検品作業。同じく異常無しで、弾をケースに片付けた。
 次にM329から弾を取り出し、検品作業に取り掛かる。弾数は六発。こちらも異常無しだと思ったのだが、一発だけ弾頭と弾体の歪みと傷の多い歪な弾を発見した。急いでいたから気付かなかったんだと思うが、もし暴発していたらと考えるとゾッとする。これからは、必ず入荷した際にも検品してから武器金庫保管しようと心に決めた。

 

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