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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

『蒼色推理』−雪銀館事件− エピローグ「本気の冗談なら後悔しない」

   

事件も終わり、それぞれがそれぞれの場所へ行きついた。
気が付けばクリスマスシーズンになっていたようだ。

何やら、双馬が蒼野を探し回っていたらしい……。
探偵小説家・蒼野優作に明日はあるのか?

 

エピローグ「本気の冗談なら後悔しない」

 雪銀館の連続殺人事件から二週間が経った。
 殺人事件は終わったが、事件が終わった後、もっとも大変だったのは、大江戸正宗の残党と弟切さんだったかもしれない。
 大江戸一派と弟切一派の間で激しい戦いがあった。大江戸一派はこの事件によって全ての不祥事が弟切さんたちによって白昼に暴かれ、失墜した。
 大江戸正宗が築き上げてきた富と名声のほとんどが盗作や犯罪によるものだったことが暴かれ、大江戸正宗の名は探偵小説の文壇から抹消されることになった。その代わり北条京平の名誉は復権され、『死霊の魔剣師』が北条氏の作品であったことが正式に認められることとなった。
 失権したのは小塚英吉や宮沢冬雄にしても同じことであり、彼らの権威は一気に地に落ちた。宮沢冬雄は雪銀館事件を経て今までの犯行の暴露がきっかけで逮捕され、今では警察監視のもとで病院に入っている。
 これだけの事件があったせいで、雪銀館は取り壊されることになってしまった。もし、大江戸正宗が、彼が築いた地位と名誉の通りの大物であり、後世まで名が残る人物であったのならば、この館は博物館にでもなって生き残ったことだっただろう。だけれどその主のスキャンダルによって館そのものも忌まわしき死霊が住み着く館という黒い噂が立ってしまった。もしかしたら、この事件の一番の被害者は雪銀館だったかもしれない。
 古山警部もまた事件後、色々と大変だったそうだ。水波先生に撃たれた後、病院で治療を受け、その手で始末書に追われる日々だったらしい。一応、この事件を解決したのは俺だったが、後々面倒なことが多いかと思って、事件解決の手柄は本職の警察である古山警部にあげてしまった。俺はそれでよかったと思っている。
 黒井さんはこの事件の後、奥さんと二人で北海道にある奥さんの実家へ帰ったそうだ。黒井さんはそれなりに年なので、事件がなくてもあと一、二年で雪銀館の執事を引退しようかと考えていたらしい。この事件を節目として、彼は執事業から引退して、今では奥さんの実家で静かに暮らしている。
 水波先生が谷間へ落ちた後、その直後に警察が俺たちのもとへ駆けつけてくれた。俺は事情を簡単に素早く伝えて、警察に彼女を救助するように頼んだ。救助は次の日の朝まで続いたが、水波先生を見つけることができなかった。もしかしたら、彼女は今や本物の死霊となり、怨念にとりつかれながら、あの世で復讐の機会を狙っているのかもしれない。俺にはもはや彼女の怨念が晴れることを祈ることしかできない。
 双馬さんはこの事件の後、ショックが強かったらしく仕事を数日休んだらしい。だけれど最近は聞くところによれば、また元気に出版社で働いているそうだ。年末の繁忙期に向かって、彼女は仕事が忙しくなっているようだ。そのせいか、この事件以来、俺は彼女と会っていない。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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