幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

会わなければよかった 後編

   

友達とはなんだろう?
本当の友達ってどういうものだろう?
須磨子がかつて淡い恋心を寄せていた中学時代のアイドル笹倉の突然死から齎された真実に、追い込まれる冴子。
追い打ちをかけるつぐみ。
決定打を口にした須磨子。
そこに残ったのは、友達なのか、それとも…?

 

 
「そんな昔のこと、忘れたわ……」
 その話をしてほしくないという意味合いも込めて、冴子は言うが、記憶が蛇口を捻って流れる水のように思いだしはじめたつぐみの話は止まらない。
「嘘うそ、忘れたなんて言わせないんだから。わたしたちの同級生の中で一番の出世頭じゃない、笹倉くんは。中学の時、都心で芸能事務所にスカウトされて、高校進学が決まると同時にタレント業と兼務。高校を出た後は進学しないで役者に転向、結構ヒット作に出ていたよね。だけど二十代半ばで突然の引退。あの人は今で一回だけ扱われて、その時、須磨子と電話で懐かしいね~って話したんだよね」
 ――とまた須磨子に同意を求めるが、べつに須磨子の同意を確実に欲しいわけではなく、冴子が露骨に煙たい顔をするので、須磨子を引き込んでこの話を続けたいだけだった。
 そんなつぐみの思い出話は続く。
「冴子が高校卒業と共に笹倉くんと別れたのって、やっぱり芸能人と付き合うのは禁止と事務所に言われたからなんでしょ? もう時効だし、本当の事言っちゃってよ」
「別に、そんなんじゃないわ」
 面倒くさそうに冴子が言い捨てる。
 そんな冴子に、今まで大人しく成り行きに任せていた須磨子が口を開いた。
「どうしてそんな風に言えるの、冴子。わたし、知っちゃったの。あの日のこと」
 須磨子にしてはめずらしく、引っ掛かるような物言いをしている。
 つぐみは軽く小首を傾げてから、冴子と須磨子を交互に見て訊ねる。
「何かあったの? そういえば、須磨子が人と距離を置くようになった頃だよね、冴子が笹倉くんと付き合いだしたの。あの頃、笹倉くんてレギュラーに抜擢されたり、密かにファンクラブが出来ていたりで、人気あったよね。俄かに人気のサッカーだったのもあるし、かっこよかったし。わたし、あの時、ちょっと思ったのよね。なんで笹倉くん、冴子と付き合うんだろうって」
「ちょっと、それ、どういう意味? 笹倉と付き合うのは自分が相応しいとでも思ってたの? そりゃ、中学の頃のつぐみは可愛かったし、そこそこモテていたけれど、それとこれは別でしょ」
「嫌だな、冴子。わたし、笹倉くんのことタイプじゃないもの。一般的にかっこよかったよね~という美意識の話でしょ。わたしが言いたいのは、笹倉くんは須磨子のことが好きなんじゃないかって思ってたから。須磨子、よく面倒事を押し付けられてたでしょう? そうすると笹倉くんが率先して挙手してたのよ。部活で忙しいのに、変わった人だな~と思ったんだけど、別の見方をすれば納得できちゃうというか。須磨子も密かに思ってたよね? 手紙の文面からも、伝えたいことって、そのことだと思うけど」
「どうだったかな……」
「またまた、もう誤魔化さなくていいって。で? この手紙だけど」
 須磨子に見せて確認させるように突きつける。

 

-ノンジャンル

会わなければよかった <全2話> 第1話第2話