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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode20

   

 ケンさんの死を探求しよとする魔夜に、大雅は警告を促す。そして、大雅から魔夜への残酷な告白が告げられる。

 本格ミステリー44口径より愛を込めて!!

 

 大雅が、独り言の様にぼやいた。そして、続ける。
「それこそ、勘違いだな。今まで射撃なんてしなかったし、思い詰めた様な顔もしなかった。お前、すぐ顔に出るから」
 どう言い訳しようかと考えていたら、大雅の目が寂しそうに笑った。
「俺って、そんなに頼りないかな」
 彼から目を背けた。無機質な床は冷たく、彼の声を事務的に受け止めては返す。
「ゴメンな。弱い男で」
 大雅を呼び止めて言い訳しようとしたが、やはり上手く言葉にならず、彼の背中は扉の向こうに消えてしまった。
「…………」
 私は再びヘッドフォンを装着し、PPK/Sを握った。最後の一発は、大雅の空けた真ん中より少し左上に命中した。
 閉店時間に合わせて、夕飯も私が作った。そんなに美味しくないかも知れないけれど、彼に謝らせてしまったせめてものお詫びのつもりだった。ちょっと焦げたけど、割と上手く出来た方だと思うのだ、今日のハンバーグは。
「ねぇ、機嫌直してよ」
「え?」
 あれから、あからさまにしょんぼりしてるくせに、恍けた疑問符で返してくれた。
「美味しそうでしょ?」
 大雅が、溜息を吐いた。
「……焦げてる……」
 ちょっと、ムカついた。
「食べなくていいよ」
 私は、大雅から特製ハンバーグの乗った皿を取り上げた。
「食べます」
 彼が頭を下げたので、テーブルに戻してあげた。
「……ごめんね」と、私が謝辞を口にすると、ハンバーグを口に運ぶ彼の手が止まった。
「火力が強いんだよ」
「そうじゃなくて」
 今度は、私が溜息を吐いた。
「……ずっと、考えてたの。ケンさん、本当は殺されたんじゃないのかって。大雅には言わなかったけど、陽太君から返却されたレンタル銃には砂が付いてたの。でも、銃には発砲した形跡はなかった。陽太君の情報では、ケンさんが発見されたとき、二丁の銃はホルスターに装備されたままだったって。だから私の考えでは、死ぬ前にケンさんは銃をホルスターから抜いて、戻したんだと思う。だけど、抜いて発砲せずに戻すものかしら」
 ハンバーグを食べながら、大雅は言う。
「魔夜の頭の中では、常に戦争状態か。銃を抜いたからって、必ず発砲するとは限らないだろ。威嚇の為に抜いたとか、護身用に構えただけとか、そういう発想は出なかったのか? 第一、日本での発砲は、本当にヤバい時に止む終えずって理由しか許されないんだぞ」
「あぁ」と、私の口から間の抜けた感嘆が漏れた。
「で、その砂について、陽太は何て?」
「警察から回収した時に、自分が落としたからその時に付いたんだって」
「ほらみろ」
「でも、何かおかしいと思わない? ケンさんが身体悪いって話、聞いたこともないし。陽太君は、ゆったり座った姿勢で死んでたって言ったんだよ。心筋梗塞で死ぬ時って、ゆったり座っていられるものなのかな。それに、タレコミの犯人はどうなったのかって疑問もある」
 少し興奮してしまい、私は自分が中腰である事に気がついた。まぁ座れと言うように、大雅が箸を私に向けて、手首を上から下に動かした。
「……ケンさんさ、元もと糖尿病の気があったんだよ。心筋梗塞になりやすい体質だったと言えば、それまでだ。魔夜が、ケンさんの死を偶然の病気だって信じたくない気持ちは解るよ。だけど、信じなきゃいけないことも世の中沢山あるんだ。わかるよな?」
 ……なんで……
「なんで、冷静にそんな事言えるの?」
 ……なんで、私だけ知らないことばかりなの?……
「魔夜より、付き合いが長い分、多少事情がわかるからだよ」
 私は悔しくて、自分の部屋に駆け込んだ。扉を閉ざすと、悔し涙がポロポロと溢れてきた。
「……魔夜……」
 声を押し殺して泣いていたら、扉の向こうで大雅が呼んだ。
「泣いてるのか?」
 ずばり言うな。
「泣いてません!推理してるんです」
「……推……」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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