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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season5-2

   

 御影は、二日酔いからすっきりと目覚めた。

 施設のスタッフ萩沢が御影を施設のベッドを貸してくれたが、目が覚めたなら早々にでていくよう感じ悪くいった。

 依頼人である少年がこの施設にいるはずだが、出会うことがなかった川上。

 門を出ようとしたとき、院長が三人を遠目から見ていた。そして、その頭上に少年が見据えていた。

 御影には聴こえるはずもない声が聴こえていた。

“たすけて”。御影はこの施設全体をにらんでいた。

 メンタルクリニック・テルユキ。
 院長がなにかを隠している人物であると探偵の目としてにらんだ。
 しかし、院長の噂はあまりにも良く、落ち度はない。御影の見立ては完全にはずれている。

 しかし、少年の訴えは、小柴のメールによって事実を述べている。

 院長が隠蔽診療をしている。健常者でありながら、疑惑を演出して障害者であると診断している。
 混乱するパニック障害として入院させる。運営資金のために、入院させるのが目的だった。

 だがこの施設はそれいじょうにおかしな点がある。

 入院して治療を施されながらも少年少女の命は短かった。助かることがないのだ。

 未来ある少年少女をこのままにはできない。

 

「氷室くん」警察の制服を着込んだ貫禄のある男性が氷室探偵を呼び止める。

「日高警視、こんにちは」氷室は臆することなく、警察を指揮する者と対等に対話をする。

「きみは、例の臓器売買の件で、自分のところの探偵を数名、拠点に送り込んだらしいな。無茶すぎる。なにかあったらどうするんだね?」鼻の下の髭が口元を読まれないようにたくわえているようで、氷室の思考を阻む。

「ええ、ああ、そうですね。ですがわたしは仲間を信頼しています。それだけでじゅうぶん事足りる理由だと思います」氷室は稚拙な理由を述べた。

「どうした、意外と小心者だなきみは。わたしがなにかするとでも?」警視は微笑みながら氷室を見据えていた。

「いえ、とんでもない」

「きみがそうやって日本じゅうを駆け巡るほどの名探偵になれたのは、わたしが発端である。そのことを忘れることなかれ」警視は、氷室の肩に手を置いた。「警視庁を好き勝手に出入りできるのも、わたしのおかげだ、いいな」

 耳元で囁かれたその言葉は、氷室の自由を奪う言葉でもある。

「はい、感謝しております」

「ではまたな」通路の真ん中を堂々と歩く警視の背後を見つめている氷室。

「あの背中、油断できないな。こうやっていても背後に目があり、おれはいつも監視されている。名探偵と謳われながらも、外部コンサルタントのアドバイザーだ。刑事ではない。権限がまるでないにひとしい」氷室はぼやいている。まるで心のうちを警視に同情でもしてもらいたいように。

「どうしました?」草壁警部がいった。

「いえ、警視にあいさつを──」

「そうですか。それでは奥へ、臓器売買の件で橋爪の意見を聴きにいきます」

「はい、わたしも早々に詰めていかないと、仲間のこともありますし」

 先導する草壁の後を追う氷室だった。いちど振り返ると、まさか日高警視が半身の状態で氷室を見つめていた。
 あっと驚かされたが、氷室は草壁についていくことに意識がむいていたため警視の視線を無視した。

「なんだ──」氷室はなにか察していた。この事件、やばい。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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