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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season5-3

   

 小柴の悪口を言っていた川上のスマートフォンに着信。それは小柴からだった。

 バツがわるそうに応じる川上だったが、少年脱出の計画をつたえるものだった。

 探偵はそれぞれ配置につき、少年が施設を出てくるところ待つ。
 しかし、暗闇のなか現れた人影は、御影を襲撃した。呆気にとられていたのは大地だった。危機回避がまったく働かなかった。

 そして御影は捕らえられた。

 川上と大地は退散する。すると少年もその場にいたことに気づいた。

 裏切られた探偵。

 なにが目的で、御影を捕らえたのか。施設内のスタッフが気を失っている御影を連れて壁の内部に引き込んだ。

 Sランクを超えた依頼になってしまった御影の拘束。それは氷室をも懸念せざるをえない事態となった。

 

 氷室探偵は、“HIMURO・D”の看板をみつめていた。3階からのぞく窓から地面に視線を落とすと、向かいのガラス面に映っているのをみながら、いま抱える問題について頭を働かせていた。

 第三者からは、おそらく呆然と佇んでいる姿にしかみえないだろうそのすがたは、どこかハードボイルドなイメージを植えつけるに値するだろう。

 小柴は黙って、静かにそのすがたを見守っていた。

 おもむろに、氷室は小柴に視線をむける。「これから食事でもどうかな?」

「なにをおっしゃっているんですか?」小柴はパソコンの画面右下をみた。時刻は12:04と表示されているが、13時過ぎにいつも昼食をとっている小柴だった。

「そうかい、たまにはと思ってな」氷室は背中で振られたことを気にしないように凛々しく大きくなるようみせつけていた。

「どうされましたか、例の事件が行き詰まりですか?」小柴はいつになく辛らつなものの言い方をした。

「そうだな。橋爪という幹部はどうもうわべの顔で、窓口というのがほんとうにぴったりあう人物だった。それゆえにさらなる奥がみえない。推理もできない。情けなくてな」氷室は悲壮感に浸っていた。

 そんなにも心に負荷がかかっているとは小柴でも見抜けなかった。

「なぜ、やつはそのさきを知らないのか。どうもわからない。それでいて、山梨県の施設については軽く答えた。ほんとうに国がらみで合法的に臓器売買を行っているとしたらとんでもないことだが、あそこまで自信満々な態度をとられるのは、わたしも警部たちも臆してしまう」

“つまりが合法的なんだよ名探偵さん”。この言葉が氷室を苦しめていた。

「他人事のように自分の仕事をまっとうしているだけだ。自供されても証拠がなければこれいじょうの詮索はできないと判断した」氷室は警視庁の草壁警部と話し合い、決定したのだ。

 そこであきらめる氷室ではなかったが、どうしても脳裏にちらつく警視の半身で見つめていた視線が気になってしかたがなかった。

「国がらみ」

 小柴は氷室がそうつぶやくのをきいた。「国、がらみ、ですか?」

「いや、なんでもない。川上くんたちに委ねるしかないだろう。なにかそれなりに掴んでくるかもしれない。少年ひとりの依頼によって、大きくうねりだすかもしれない。期待はおおいにある」

 氷室は信じ込んでいる。仲間とは遠く離れていても、後ろ盾として控えているものだ。すべての懸念を安心させて集中できるだけのサービスを保障させる。それが氷室代表の立場であった。

「やっぱり食事いかないか?」

 小柴は冷ややかに、にらんだ。「むりです。さきほどからメールが届いていますので、それについて川上探偵たちに指示をだします」

「そうか、少年脱出のね。わかった」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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