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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <三十二>

   

 金が消えたと山根に相談した。予想通りの反応だった。
 偽の引越し業者、居場所が判った。そして意外な人物との繋がりが……

 

 
「六千五百二万? そんな大金、銀行にも入れないでどこに保管してあったんですか? 無用心にも程がある」
 山根は想像通りのリアクションを取った。憤りを隠せない様だ。三角巾で右腕を吊った俺に大声を張り上げた。
「いやぁ~。クローゼットの奥のスポーツバッグに仕舞ってあったんです。何せ、月二百万の仕送りだったんで、現金で貯めてみたかったんです……よぉ」
 山根は俺を、金持ちの御曹子。ろくでなしのお坊っちゃまと、蔑む目付きで睨んでいる。もし仮にこれが本当の事だったとしたら、俺は本当にろくでなしのお坊っちゃまかもしれない。だが「麻薬を売った金」とは口が裂けても言えないじゃないか! 俺は恥ずかしさを押し殺して山根と対峙した。
「それでですよ。あの引越し業者が持ち去った事は確実なんですね?」
「はい。電話で俺は業者の人に、貴重品としか伝えなかったのに対し、相手は金と云う言葉を使いました。社員で山分けしたのか、それとも電話で応対した奴が一人で所持しているのか。それは判りませんが、盗んだと自白したも同然です」
 そこで高崎が二階から落としても壊れなさそうな頑丈なパソコンで何かが判ったらしく、山根に報告した。
「山根さん。その業者なんですが、最後の斎賀さんとの電話の発信元を洗った所。埼玉県の山中のレンタルトランクでした。と云う事は引越し業者自体存在しない架空会社と云う可能性があります。何かおかしくありませんか? 携帯電話はプリペイドです」
 山根は窓から下を見つめ、フンフンとうなずいている。
「臭いますねぇ。犯罪の臭いが……」
「捜査差押許可状、取りますか?」
「あぁ、直ぐに裁判所に連絡しろ。私達と吉高で現地に向かう。恐らくヤク絡みだろうな……」
 刑事の勘は鋭いとは言ったものだ。しかし何故ヤクが絡んでいる? もしかして八郎が? いや、そこまで悪どい奴じゃぁない。可能性としてあり得るのが、八郎の部下だ。確か京子はそこの業者はポストに入っていたチラシで知ったと云う。ならば、金が俺の元にあるのを知って、敢えて架空のチラシを忍ばせた。成る程、筋書きが出来てきた。あの業者の人達、やけに派手だったと今思い返せば解る。金髪の奴がほとんどだった。もしかしたら俺のみぞおちに蹴りを入れた奴が居たのかもしれない。俺はそいつの顔を覚えていないが……しかし金の入ったスポーツバッグはダンボールに入れてあった筈だ。どうしてそれが分かった? 「荷物をバラしてる時なんですが、何故が全てのダンボールに二重にガムテープが張ったあったんですよ。剥がす時にスルスルっと剥がれるっていうか、一枚目のガムテープを剥がせばもうテープが貼ってあるだけで、空いてたんですけどね。でも、これは一度カッターでガムテープを切り、中身を見て上からガムテープを貼った感じでした。京子さんはそんな事してませんよね?」
 高崎がやんわりと京子に迫った。無論京子がそんな事する筈がない。間違って一度封をしてしまった箱に何かを入れたって可能性はあるけど、全ての箱にって、そんな手際の悪い京子じゃない。それに、荷作りは山根も手伝ってくれていた。
「成る程、全ての箱をあのトラックの中で開けて中身を見た。そして金の入ったスポーツバッグだけをトラックから出さずに、さも全て出し終えた風を装った。しかし何故斎賀さんが大金を現金で持っていると云う事が分かったんでしょうか?」

 

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