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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode21

   

大雅の告白に酷く狼狽する魔夜だったが、松野さんとの会話で前を向こうと決意する。

 本格ミステリー44口径より愛を込めて!!

 

 少し、寝ようと思った。再びベッドに潜り込んだが、結局寝れずに大雅の声でベッドから起き上がる事になってしまった。
「おはよう」
 私は、顔を逸らしながら言った。
「おはよう。体調は良いの? 寝れなかった?」
 大雅の声は、至って普通だった。彼が机に淹れたての珈琲を入れたマグカップを二つ置きながら問うた。
「……うん……」
 力なく頷いた私。
「薬出そうか。病院行くまで時間あるだろ。少し、寝た方がいい」
 大雅は焼きたてのトーストとチーズ入りオムレツを机に並べると、ガスコンロ横に設置された収納棚の薬用引き出しを開けた。睡眠薬を取り出そうとした彼の手を、私は袖を引いて止めた。
「いい」
 そう一言発して、私は静かに朝食を食べ始めた。
 その後私は、病院の時間までソファで横になっていたのだが、その間活動写真の様な映像を眺めていた。眺めていた、というより見せられていた、の方が正しいか。その映像は、擦り切れた様に画質が悪いモノクロで、動きはギクシャクとしていて音はなかった。映像は幾つかあり、一つは下品な女の姿が映り、その女はカメラマンを殴りつけているようだった。別の映像は、何人もの子供に囲まれた室内でカメラマンは何を映していいか解らずに迷っているようだった。また別の映像は若い男の姿が映っていて、カメラマンは頻繁にカメラワークを外していた。そして印象深かったのは、年を取った男の姿で、カメラに向かって男は優しそうに笑っていた。それは、古い古い映画のようだった。
「魔夜、そろそろ出ないと。大丈夫?」
 大雅の声で、現実に呼び戻された。
「少し、眠ってたみたい」
 私は、怠い身体を起こした。
「夢見てたみたいだから」
「夢?」
「うん、知らないおっさんが笑ってた」
「…………」
 店からわざわざ呼びに来てくれたんだろう大雅の横をすり抜けて、私は薄手のカーデガンを羽織った。
「送ろうか? 今、客いないし」
 私は、笑う。
「いぃ。一人で行けるから」
 が、上手く笑えなかった。
「……魔夜……」
 玄関を出ようとした私を、大雅が呼び止めた。
「無理するなよ」
 私は、無言で頷いた。
 病院でいつも通り診察を受けた。寝不足と疲れ以外、異常無し。結果の出ない暴露療法を終え、ベッドに腰掛けて一息吐いた。
「魔夜ちゃん、元気ないけどどうしたの? 目も腫れてるし、大雅君と喧嘩でもした?」
 喧嘩、になるのかな? と、考える。
「……松野さんと、少しお話したかった…」
 私は深呼吸を一回した。松野さんは、私が話し出すのを辛抱強く待っててくれた。
「大雅の事、教えてください。最近、彼の体調はどうだったんですか?」
「何かあったの?」
「体調、悪かったんじゃないんですか?」
 松野さんは、私への質問を辞めた。
「日向野先生の指示で、少し前に薬の量を増やしたの。初めて量を増やした時は、失神寸前の目眩が出たわ。それで少し減らしたんだけど、微熱、口内炎、だるさの症状がなかなか収まらないのよね。先生は暫くの辛抱だって言うんだけど、正直可哀想で心配してるとこなのよ。だからって、私の判断で薬を辞めたり、量を減らしたり出来なくて。大雅君、体質的に薬が合わないんじゃないかって思うのよ」

 

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