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ノンジャンル

怒りの値段(下)

   2015年11月27日  

悪行の道を極め、エスカレートして行く売湖。
彼が最後に行き着いた場所は、テロリストのアジトだった。
下葉は昼飯もそっちのけで、テレビ中継から売湖の奇行を見守るのであった。

作家の正義を振りかざし、宗教テロと果敢に戦おうとする売湖。
大ベストセラー作家の物語りの結末は、いったい何を示していたのだろうか?

 

問題:偉大な作家の死を、国民はいかに弔うべきか?

それから数日後……。
俺は、出版社から頼まれていた原稿仕事をなんとか終え、今度はライター事務所の原稿に取り組んでいた。コピーライティングの仕事で、いわゆる女性向けの脱毛やらエステやらを紹介する記事だ。俺はそっちの気はないが、美容のライティングって、けっこう需要があって儲かったりするんだよね。

さて、黙々と仕事をしていたら昼間になった。
俺は自宅勤務なので、昼食をいつもひとりで食べている。
棚からカップラーメンを取り出して、テレビのスイッチをつける。
お昼のニュースでも観ながら、ラーメンを食べることにした。

だが、世間は、俺にカップラーメンを定刻通りに食べさせてくれなかった。
なぜなら……。

***

 なんと、売湖の奴、今度はどこかのテロリストの基地で中継をしているらしい!
しかも、テロリスト相手に、挑発して、いつものバカトークを繰り広げていた。

その昔、とあるカルト組織が地下鉄で毒ガス事件を起こしたことがある。
そのとき、勇敢にも、そのカルトをインタビューした作家とかいたが……。
売湖が今やろうとしていることは、おそらくそれだ。

どうやら、テレビ中継を観ていると……。
麻薬密輸と武器密輸で問題を起こして、警察に捜査されている宗教テロ組織がいるのだが……。その組織のアジトをなぜか売湖が見つけ出し、護衛、警察、テレビ局の取材班を連れて、乗り込んだらしい。

売湖「おい、テロども! おまえらはバカだ! そして僕は天才だ! 僕はなあ、国民の平和を守るために戦っている作家だ! おまえたちの麻薬と武器の密輸に関しては、果敢にも僕が独自ルートで調査し、とうとう突き止めた! ここにはマスコミと警察もいる! おまえたちにはもう後がない! 大人しく武器を捨て、投降しろ! そうしたら、僕が出版するレポタージュでは、おまえたちのことを可哀そうに同情たっぷりに書いてやろう!」

テロ「あ? なんだと、アホ! 俺たちは宗教テロだ。麻薬や武器の密輸なんて、革命のために当たり前にやってるぜ? だいたいよお、てめえも相当な悪党だよな、売湖先生よお? マルチ商法やっている外道に、んなこと言われたくねえよ!」

テロ2「んだと、こら! 俺たちを調べただー? てめえ、マスコミと警察連れてこんなとこ来てタダで済むと思うなよ!!」

テロ3「そうだ、そうだ! だいたい俺らはよ、悪党だからよ、知識人とか文化人とかが大っ嫌いなわけよ! てめえみたいなカスが一番むかつくわ!」

テロ4「ていうかよ、中継すんな、クズども! このクソ作家、ばらしてやれ!」

テロリストたちはそう言うと、数十人で売湖に殴り掛かってきた。
最初は、シークレットサービスたちも警護していたが、さすがは悪党のトップと言おうか、宗教テロは半端ない。密輸した武器を持ちだし、激しい銃撃戦で売湖とシークレットサービスたちを蜂の巣に変えて行く。現場の中継は、阿鼻叫喚を極める事態となった。

売湖「ちょっと待って……。話が……違うぞ……!! なんで、僕が撃たれているんだよ……? 台本と……違う……!!」

売湖は、血まみれになりながら、もうろうとした意識の中、最期の言葉を吐く。

ボス「おい、おまえら、その辺にしておけ! 台本と違うだろう! って、もう後の祭りか!! すまん、売湖、我らが信ずる神のために死んでくれ!!」

止めようとしたボスだったが……。
部下の何人かはカッとなり「台本」のことを忘れてしまったようだ。
そして、部下たちが銃撃戦に熱中している様を見ると、もはやヤケでボス自身も銃殺に加わった。

カメラ「先生、偉大です! 大変偉大な最期です! 売湖先生は、国民の皆様を守るために、死してまで作家として戦いました!!」

取材班は、作家の信念のもとに行動し、死して国民の生命と安全を守った売湖をまるでヒーローかのようにはやし立て、中継を続けるのであった……。

 

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