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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode22

   

 魔夜の過去が蘇る……。

 本格ミステリー44口径より愛を込めて!!

 

 声は震えてしまったけれど、私は精一杯の笑顔で答えた。
「赤い方が私のだから大丈夫だよ」
 私はダイニングチェアに座ろうとしたのだが、足が縺れて床に座り込んでしまった。驚いた大雅は立ち上がり、気遣う様にしゃがみこんで私の肩に手を置いた。
「やっぱり、体調悪いんだろ? ベッドまで、運ぶよ」
 大雅は、何でこんなに優しいんだろう。優しく出来るんだろう。
「大雅」
「何?」
「プレゼント」
 私は、露天商で先程購入したブレスレットを大雅の左手に嵌めた。金属のブレスレットが、彼の手首でキラリと光る。
「もし大雅が私の事を忘れても、私は忘れないから……」
 大雅がブレスレットの刻印に気付き、暫くそれを見つめていた。
「……だから……大雅も……忘れないで……」
 矛盾している事を言っているのは、十分承知している。でもそれが、私の正直な気持ちだった。笑わなきゃ、笑わなきゃと何度も言い聞かせ、精一杯の笑顔で大雅の顔を見上げた。真剣な彼の目を見ていたら、本当に笑えているのか不安になった。
「……大……雅……?」
 気付くと、答えの代わりに大雅に抱き締められていた。何度も私が彼にしたくて、出来なかった事だった。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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