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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

婚活サイトの悪霊

   

今からお話するのは、若手ライターの山田さん(仮称)が体験した怪談です。
とある婚活サイトには悪霊が出るという黒い噂が流れていました。
山田さんは仕事で、その婚活サイトへ覆面調査をしに行くことになったのです。
さて、いったい山田さんは、いかなる「悪霊」に遭遇されたのでしょうか?

 

 

 今から僕が話す物語は、怪談だ。
 それも婚活をやっている人にとってはとても怖い怪談だ。
 どんな物語かと言うと……。
 あれは、1カ月前のライター事務所での仕事依頼からさかのぼる……。

***

 編集長が僕に新しい仕事の話があるとかで、昼飯後、すぐに呼び出された。
 呼び出されたのはもうひとりいて、僕の先輩だ。
 先輩は、遠野康太(とおの・こうた)という30代半ばの風采があがらない独身男性。
 ちなみに、僕の名前は、山田弘和(やまだ・ひろかず)。
 どこにでもいる三文ライターだけれど、まだ20代前半の若さだけが取り柄のぺーぺーだ。

「うむ。君たち。そろったようだね? 実は私の方から、君たちに重大な仕事を任せようと思ってね……」

 編集長がそう切り出すと、僕たちの間に緊張が走る。
 いったい、どんな任務なのだろうか?

「実はだな……。君たちに、婚活サイトへ潜入調査をしに行ってもらいたいんだよ……」

 え? 婚活サイトって?
 たしか、出会い系サイトに比べてマジメな奴で、結婚相手を探すサイトだっけ?
 はてな? という顔をする僕の横で、先輩は真顔だった。

「でね、その婚活サイトなんだが、登録費用とか月会費とかはもちろんうちの経費で落とすから。君たちにはだね、そこの会員になりきってもらって、婚活サイトの使い心地だとか、利用価値だとかを、レポートしてもらいたいんだよね……」

 へえ……。ライターの仕事ってそんなことまでするんだ?
 いわゆる、覆面調査ってやつかな?

「あ、あの……。質問があります!!」

 遠野先輩は、ぎちぎちになりながら、手を挙げた。

「なんだね?」

「その、ですね……。婚活サイトへ調査ということは、そこの会員になりきるわけですよね? もしですよ……婚活サイトで本当に相手が見つかってしまったとしますよね? その場合、最後はどうなるのですか? 実は調査でした、ということを相手に宣言して、別れることになるのですか?」

 わはは、と編集長は豪快に笑い出す。

「うむ、その場合だが……。相手に別れを宣言しなくてもいい。そのまま結婚してくれてもいいよ。もちろん、結婚式の費用とかまではさすがにうちは出さないけれど」

 そして、まとめる。

「ま、遠野君に関して言えば、30代半ばで婚活もそろそろ正念場じゃないかな? なんなら、この仕事でいい相手見つけて、そのままゴールインしてくれてもいいんだよ、うちとしては! それに山田君も若いって言っても20代だ。そろそろ結婚も意識した方がいいんじゃない?」

 と、いうことで特に反論異論もなく、僕たちはその仕事を引き受けることになったのだ。

 だけれど、ね……。
 編集長が暗い顔で最後にぼそり、ともらす。

「その婚活サイトだけれど……。悪霊が出るらしいから気を付けてね! ま、そんなのただの噂話、都市伝説だから気にすることないよ、ははは!」

 

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