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ハートフル

kissチョコなんてきらい

   

何故だろう。
気付いたら、ここに居た。

青春を追い求める事は素晴らしいかもしれないが、それが必ずしも一生の成功に繋がるとは限らない。
それでも、
それでも残念ながら、
人間は生きて行かなくてはならないのだ。

 

煙草をやめてからというもの、どうも目覚めが悪い。
それ以外に弊害はないので、上手く禁煙に成功したとは言えるのだろう。
そもそも、禁煙したから目覚めが悪いという推論が間違っているのかもしれないが、
再度、煙草を始めてスッキリ起きられるのなら、迷いなく吸ってしまうだろう。
ぼんやりとそんな事を考えながら、身体を起こす。
しばし、ベッドで望洋とした後、ナイトテーブルに手を伸ばして手鏡を取る。
顔がむくんでいる。
そして一層に隈も酷い。
化粧で隠せるだろうか、
そもそも、そんな時間あるのか。
こんな時、思う。

「いや、こっちだって大変だよ」

と、反論されるかもしれないが、どうしても思うのだ。

「ああ、男に生まれたかった。」

と、

通勤電車の中では、いつもの光景が広がっていた。
いつもの席にはいつものサラリーマンが座っているし、
ほら、この駅ではいつもの学生達が乗って来た。
そして毎朝、女子高生の集団が当て付けのように自分の前に群がるのだ。
この朝の早い時間に乗ってくるだけあって、この女子高生達は揃いも揃って化粧っ気がない。
加えて、皆しまった身体つきをしているので体育会系の部員だろう。
朝練でもあるのか。
いつもはよく見ないが、今日に限ってよくよく見てしまう。
ブレザーから覗くアンダーアーマー、
やけに大きいスポーツバック。
そして小脇に抱えた縦長のケース。
どうみても、このケースに楽器とかお上品な物が入っていそうな気配はない。
学生の一人の手の平を盗み見ると、小指の付け根にマメが出来ていた。
そこから察するに、というか疑う余地もなくケースの中身は金属バットだろう。
「野球部か。」
聞こえないように呟く。
女子なのだからソフトボール部かもしれないが、なんとなく察しがつくのだ。
野球部の女子高生達は、化粧もせず一様に無個性な髪型で、顔は脂ぎっている。
にも関わらず、とても輝いて見えた。
何故、彼女達が野球部で、
何故、こんなにも眩しく見えるのか。
その答えにも、なんとなく察しが付く自分が嫌だった。
余計に歳を取った気がしてしまうからだ。
そんな事を勝手に思いながら、服の上から左肘の手術痕を摩る。
「私だって、さ。」
と、今度は口に出さずに呟き、電車から降りる準備を始めた。
今の私は、ただのOLなんだ。

 

-ハートフル


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