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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <三十四>

   

 遂に第六機動隊が突入した。廣瀬のトランクルームからは驚くほどの麻薬が出てきた。そして田口が失踪した。

 

 
 翌朝、あまり眠れず目の下にクマを作っていた。時刻は午前七時。そろそろ第六機動隊が突入する頃合いだ。
 暗闇で黎明を待つ気持ちが、心の隙に入り込んで蝕んでくる。八郎はもうメキシコへ飛んだだろう。レンタルトランクが何室並んでいるのか知らないが、中身はすべてヤクと武器であろう。機動隊がどう応戦するのか。相手が武装の素人であることを祈ろう。
 ラットは俺がソワソワしているのを感づいたらしく、枕の上で寝そべりながらジッと俺の顔を見ている。
「心配かけてごめんな! でも、俺らが被害を被る事は無いから心配するな」
 そう言って、ラットの頭を優しく撫でた。やはりラットは大きくなっている。前は人差し指一本でしか撫でられなかったが、今は二本で丁度だ。名取のジジイの所に行ってからだ。名取はラットを大きくさせようとしているのか? いや、服部じゃぁあるまいし。
 腹は空いてないが、紅茶が飲みたくなった。部屋を出て京子を起こさないように、そーっとキッチンに行き、紅茶を淹れソファーに腰掛けた。ラットはまだ眠いようで、俺のひざの上で寝息をたてている。
 携帯電話に山根から画像ファイルが送られてきた。青いトランクルームが立ち並ぶ山中の画像だが、そこに金髪の男が三人程写っている。その中の一人に見覚えがあった。俺のみぞおちに蹴りを入れた奴。引越し業者の現場監督みたいな事をやっていた奴だ。こいつが恐らく田口だろう。俺は山根に田口が写っていると返信し、ソファーにもたれ掛かった。ギシッと云う音が部屋に響き渡る。その音で京子を起こしてしまったみたいだ。
「おはよぉ……早いねー。どうかしたの?」
「今、機動隊が例の廣瀬が所有しているレンタルトランクに突入するんだ。気のせいかもしれないけど、なんか悪い予感がするんだ。だからあんまり眠れなくって」
「そっか。それは心配だね。朝ごはん作るね。ちょっと待ってて」
 京子は顔を洗いに風呂場へと向かった。俺は紅茶をもう一啜りすると、また携帯にメールが入った。今から機動隊が突入するそうだ。手に掻いた汗をズボンで拭い、報告を待つ事にした。

 

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