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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season5-5

   

 少年は院長の恐るべき目的の真実を知っていながらも、御影にそれを話せずにいた。

 あわよくば知らずに、ただ施設を逃げ出すことができればいい。そして、救いたい大切なひとがいることを告げる。

 少年の胸のうちと脱出への算段をつけて、いざ行動へ。

 掃除道具でいったん身を潜ませる御影と高坂。ふたりはそこで小柴からの作戦メールを受け取り実行する。

 逃げだすことではなく、院長とこの施設を一網打尽にするものだった。

 御影は少年とある武器を所持し、地下2階へ降りる。

 二手にわかれると、高坂は救いたいと願っていたひとをみつける。
 安堵もつかの間、背後に佇む悪鬼が少年に襲い掛かった。

 御影の耳にも少年の悲鳴が轟く。危機的状況に御影は抗う…。

 

「金銭目的です。ここの運営活動費。ほんとうに精神障害者を診るのはたいへんでしょう。手間がかかる。でも健常者を偽装させれば言うことはきく。恐怖にひれ伏すことを理解させることもできる。強弱がわかる者であれば入院していても隔離すればいい。屈することが理解できる頭脳があればそれでいい。あとは“若く健康である体”、目的はそのふたつ──」

「若く健康である体?」御影は反芻したが、不自由であればそれだけリハビリか、連れ添ってあげたり、手がかかるという、そういう意味だろう。

「こういう話はなにかと後味のわるいものばかりです。あなたは平然と聴いていられますね?」少年は御影の精神面を疑いはじめた。

「ああ、だっておれ関係ねーし。そういうひとがいるのはわかるが、おれは探偵だ。依頼があればゴールへむかって解決する。それだけだ」
 御影は過剰なまでに在り方というものをいった。それは大人としての社会を指し示している。すなわち、善悪の見極めということだ。

「よかった。そういうひとでなければならない」少年は微笑んだ。

 御影は、少年の微笑みにつられて共に微笑んだ。

「ぼくの腕時計の話ですが、トリックはわかってるんです。ぼくのあとに入ってきた、いやむりやり入れさせられた少年少女たちが、同様の手口で健常者が異常者にしたてあげられてしまったやりかたですけど」

「おう、それは興味深い、どうやった?」御影は前のめりになった。

「医師やスタッフが、患者を留まらせるために、罠に嵌めるのは、さきも述べたとおりです。健常者を精神異常者にしたてる。そのためには妄想や虚言癖であると家族に思わせること。その証拠を奪い、破壊しては他人のせいにする。まともであればそんなことはまずしない。苦しみから逃れるために。そういう意味ではさすがは精神科の名医でしょう。心を騙すのはお手のものです。医師は患者に、睡眠薬で深い眠りにつかせ夜中に荷物検査をする。なにを持っていて、なにを持っていなかった物か。それに他人の物を自分のバッグに盗んでしまった、だが本人はとうぜん覚えていない。患者は自分がなぜ持っていたか、それがわからず混乱するから確実に疑われる。それを精神のパニック障害と偽り診断する。施設は患者を留まらせ、入院料をせしめていく。潤う施設と評判のいい医師。その成果を宣伝する。送られてくる患者にいった。医師は冷静に親身になって親切に診断していくが、それは誘導尋問のような手法だった。自分がそういう人間だと思わせる。暗示にかけて、そういう人間だということを信じ込ませていく。罠に嵌る患者はこの施設で生かされていくしかなくなっていく。家族、友人は医師の診断結果にだれも疑いは持たなかった。いちど入ったが最後、二度と出られない。最後は、ほんとうに精神を病んでしまい、可哀想なひとと思われ死んでいく──」

 少年は淡々と話していった。

 御影は苦しかっただろうと、眉間にしわを寄せた。「きみもそれを危惧して逃げたいと?」

「ぼくは救いたいひとがいる」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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