幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season6-1

   

 御影と森谷に新たな依頼を小柴が伝えにくるが、御影の態度が気に入らない。最近好調なせいで天狗になっていると周囲は感じていた。
 そんなつもりはない、と御影はいってもだれも聞き入れない。

 やはりそう見えてしまうのだ。自信と慣れという生活に怠慢としてみえる。

 御影はいま、大事な時期であることを知るときでもある。

 依頼内容を聞いた御影と森谷は絶句した。

“物的証拠を手に入れろ”、まるで映画のサブタイトルのようだ。

 依頼人へ会い、詳細を訊くことにした。

 若き社員が行方不明になった。その捜索をしてもらいたいというのが本当の依頼だった。

 佐伯事務員が説明した物的証拠を手に入れろ、と矛盾が生じているが、御影は依頼人の部品工場の人事課長彦根の話しに耳を傾けていた。

 だが、今の御影は行方不明の捜索くらい警察がやればいい。とどこか依頼を選んでいる発言をする。

 無心に依頼に喰いついていたころが懐かしい。

 だが、この依頼は御影の胸うちを大きく見つめ直すことになる。

 

「森谷さん、御影くん、依頼がきてます」小柴が事務的にいった。

 ふんぞり返っている御影に小柴の目つきは鋭かった。

「どんな依頼?」御影はいった。

「あなた、姿勢を正したらどう?」小柴はにらんだ。

 御影は自分の格好を改めた。椅子に浅く腰をかけ、両足を遊ばすように伸ばしきっていた。両腕は肘掛にやはり伸ばして後頭部を完全に背もたれにのせていた。
「あれ、すみません」
 すぐに姿勢を正した。

「たく、最近ちょっと依頼がうまく解決できているからって調子のってんじゃないの!」小柴が舌を捲くし立てるようにいった。

「え、どこからそういう言葉使いがでるのかな? 小柴さんはほかのお客さん、つまり依頼人にもおなじような口調なの?」御影は背もたれに体をあずけて顎をあげるように歯向かった。

「あらー、えらくなったものね。どの程度の調査能力が身についたかは知らないですけど、すごい物言いね。このわたしにそういう態度になれるのはすごいわねー、あなたねー」小柴の圧力は、森谷をも膝を崩す。

「御影くん、小柴さんに謝りなさい」森谷は近くにいたが、最終的に助け舟というより非は小柴にないというのがここでのルールであった。

「すみません。生意気でした」御影は釈然としないまま謝罪する。

「まだまだ見習いよ、あなたは!」小柴に情はない。それが小柴なのだ。

 御影は顔を背けていた。

「ふんっ!」子どもっぽく威嚇しながら背をむけてふたりの前から去ろうとする小柴だった。

「小柴さん、それでどんな依頼なの?」御影の声は小柴には届かなかった。むしろ無視したようだ。

「すごいなあれ、社会人としてどう思います?」御影は目を見開いていた。

「いやー、ちょっと虫のいどころがわるいのかな。あんな彼女をみたのは、わたしですらはじめてなのだよ」森谷も驚愕していた。

「まったく、どうしたのかね?」御影はいった。

 すると、そこに森谷の助手、佐伯事務員が小柴の代わりに依頼を伝えにきていた。
「それはあなたのせいよ、御影くん」

 ふたりの背後にいたため驚いた。御影は椅子から転げ落ちた。

「これは、佐伯事務員」森谷がいった。「どういう意味かな、御影くんのせいとは?」

「やっぱりあれじゃない、このあいだの山梨での施設解放の事件解決したのが御影くんが功労賞なわけでしょう。それを殊勝な心でいるのならいいんだけど、どうも天狗になってないかなって、みんないっているし。もっともわたしもちょっとそうみえるときあるかなと」佐伯も感じとっていた。

 それだけ御影は調子がいいのだ。

「そんなことないけどな──」御影は床にあぐらをかきながら首をかしげていた。

「佐伯さん、依頼内容を…」仕事熱心な森谷探偵だった。わだかまりしかうまないことは避けたいのだ。

「おれ解決してないし、殺されかけてとんでもないことになっていた。少年ひとりを体を張って救えたようなものだしな、おかしいな──」御影はひとり言のようにいいながら耳を貸す。

「今回は──」佐伯は話を進めていた。

 森谷と御影は意外な依頼に絶句していた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season6 <全7話> 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話

コメントを残す

おすすめ作品