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RAT <三十七>

   

 捜査打ち切りの報道が流れた。廣瀬は聞いているだろうか? いや、聞いているはずだ。薄暗い部屋の隅で、薄ら笑いを浮かべているに違いない!

 

 
 作戦は案外あっさりと決まった。
 金丸の決意。それを疑う者は誰一人居なかった。
 だが、山根は相当金丸を心配しているらしく、会議中、しきりに膝を揺すっていた。
 決戦の地。そこは東京都東村山市の八国山。所沢との境目にもなっている。東西一・五キロ、南北三○○メートル。それが廣瀬を追い詰めるリアル戦争ゲーム盤になるであろう。
 作戦はまず、東村山駅にある高層マンションにSATのヘリを置き、待機する。
 金丸は、北山公園から八国山緑地へと進む。無線で連絡を取りながら八国山へ入山し廣瀬が姿を現わすまで待つ。廣瀬が現れたと同時にヘリを八国山上空へと移動させ、SATの制圧一班がヘリより降下及び狙撃班は空中で待機、狙撃準備。制圧二班が東村山側の入り口四ヶ所、所沢側五ヶ所を封鎖及び突入する。金丸は防弾ベスト着用の上で廣瀬をあおりつつ、八国山内の将軍塚を目指す。
 将軍塚辺りには狙撃班と制圧班で固め、廣瀬の動きをおさえる。

 この作戦を警備部警備第一課長、及び警備部長に具体的に説明した。山根の同僚ともあってか、警備部長の島原はあっさりと納得した。
 しかし警備部警備第一課長の佐田はいささか不安の様だったと云う。佐田はSATを治める最高幹部であるが故、素人の俺が考えた作戦に不満がある様だ。何せあの第六機動隊を一人で壊滅させた怪物だ。警戒しない方がおかしいのかもしれない。
 総員を増やす。と佐田が言ったそうだ。当初作戦では三○人ほどのSATがいれば大丈夫だろうとの事だったが、佐田は五○人まで増やすと言った。それで両者納得したそうだ。
 さぁ、今日。捜査打ち切りの報道が出る。廣瀬は聞いているだろうか。いや、聞き耳を立てて待っているに違いない。何処か薄暗い部屋の中で動向をじっとうかがっているだろう。
 この作戦には俺も同行する事になった。とっさの判断力が必要だとの事だ。山根達の車に乗って、八国山を周回する。俺も被害を被る可能性があったので、防弾ベストを着ている。
 うちを出る前、京子が心配そうに俺に言った。
「怪我だってまだ治ってないのに、危険だよ。辞めておいたら?」
「そうもいかないさ。俺が出した作戦なんだから、いざって時に判断しないと……」
「無事で帰ってくるって、約束して」
 京子は小指を俺の前に差し出して言った。
 俺は京子の小指に俺の小指を絡めて指切りをした。
「あぁ、必ず。無事で帰ってくるよ。夕飯はパスタがいいなぁ」
「分かった。アルデンテに仕上げるから早く帰ってきてね」
 京子は必死に笑顔を繕った。
 あの京子の笑顔が頭から離れない。高崎が運転する車で後部座席に腰かけ、窓の外を眺めていた。

 

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