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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <三十九>

   

 無事京子を救助でき、俺たちは一度病院へ搬送された。死に対面した者はPTSDになりやすい。ロールシャッハテストを受けさせられた。

 

 
 とりあえず、京子を救急車に乗せて一緒に病院に向かった。死に直面した者はPTSD心的外傷後ストレス障害になりやすい。俺も死体を見すぎた。俺もカウンセリングを受けることにした。
 ロールシャッハテストと云うのを受けさせられる事になり、左右対称の絵の具の染みみたいなやつをずっと何枚も見せられる。カエルに見えたり。蝶に見えたり。そして何故、何処がそういう風に見えたのか、事細かく質問される。二時間ほどだっただろうか。かなり疲れた。
 診断結果は一週間後らしい。だが、医者が言うに問題ないだろうとの事だった。それよりも心配なのが山根だ。自分のたった一人の息子を失って、かなり不安定のはずだ。鬱にならない事を祈るが。
 俺達は高崎の運転する車で自宅まで送ってもらい、うちの前で少し立ち話をした。金丸についてだ。高崎達は金丸の事が気に入らない部分もあったが、絶対に譲らない太い芯を持っていたと話した。それは猜疑心。人を一度疑ったら離さない。それで何人もの犯罪者を捕まえてきたらしい。確かに俺の時も金丸はずっと疑っていた。
「あの金丸さんのデカイ態度も、もう見られなくなると思うと凄く悲しいです。今までの金丸さんなら、倒れた廣瀬にずっと銃口を向けていたはずです。でもそうはしなかった。最期は優しい警察官でありたかった。金丸さんが不憫で仕方ないです。松本の仇。金丸さんが討ってくれた。今度は金丸さんの仇を討つ番です。服部を何としてでも見つけましょう」
「確かに残念です。どこか心の奥で自分が金丸さんを殺したような気になります。でもそれは山根さんも同じでしょう。でも刑事が仇討ちなんて、ダメですよ。怒りの念は一度なくしてください。でないといざとなった時、冷静な判断ができなくなりますよ」
「それもそうですね。撤回します。今日はゆっくりと休んでください。金丸さんの葬儀の事はまた報告しに来ます。では」
 そう言って、高崎は去っていった。
 部屋に着くと、どっと疲れが押し寄せてきた。それと同時にラットが飛びついてきた。ティーシャツにしがみつき、肩までよじ登ってきた。俺はラットの頭を撫でると、今日、ラットに助けられたことを思い出した。導線の切断。あれはラットの色だ。白い胴体に赤い目。ラットが京子を、俺を救ってくれた。
「ラット! ありがとな。お前のお陰で俺も京子も無事だったよ」
 ラットは鼻先をそっと俺の頬に引っ付ける。ひんやりとした感覚が伝わって来る。その後ラットは俺の耳の穴に鼻先を突っ込んだ。
「ははっ、くすぐったいよ! そうだ夕飯。俺が作るよ。京子は座ってな!」

 

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