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不思議なオカルト研究部 第三話 酒場の守り神 前編

   

「えぇ~、バイトの給料日前だからお金無いっす。私飲みにはいけないっすよ~」
 眉も目も寂しげに垂れ、その顔は「自分抜きで飲みに行っちゃヤダ」「行くなら日を改めて欲しい」と言わんばかりだ。ならばと直也はそれを提案せんと立ち上がったが、同じタイミングで石動の心配を一瞬で掻き消したのが緑ヶ丘だ。今日、これからを推す彼女の言葉は魔法ように効果覿面だった。
「美也、忘れたの? こういう時、私達にお金は要らないのよ?」

 正式に入部し、オカルト研究部員となった直也。彼の歓迎会がオカルティズムという名の怪しげなバーで開催されることに──。

 

 カフェ『ハンドメイド』で生霊話を聞かされた山田直也はその足で部室に向かい、緑ヶ丘の言う証拠、撮影された映像を確認した。
 話のオチまで聞き及んでいる直也に恐怖こそ湧くことはなかったが、しかし映像の生々しさは彼の想像以上。いかなる技術をもってしても、この映像を作ることは不可能だろうと彼は思った。そう、これは本物の心霊映像だと彼は信じたのである。
 つい一週間前、このサークルの存在さえ知らなかった頃の彼ならきっとそうは思わなかっただろう。心霊、妖怪、妖精、黒魔術──ありとあらゆるオカルトに興味を持たずに生きてきた彼だもの。たった一週間で驚くべき変化を得たものである。
 さて、映像を見終えて感嘆の吐息を洩らしたそのタイミングで、直也の前にバインダーに挟まった一枚の用紙が差し出された。見ると『入部申込み』と書かれたそれ──茶色いボブカットに化粧っ気の無い顔の二回生、石動美也が満面の笑みで差し出している。
 彼女にそんな顔を向けられると照れて仕方のない直也だが、それに負けてと言うわけでもなく、彼は自分の名前を用紙に書き込んだ。
 実は映像を見る前から、彼は心を決めていたのだ。緑ヶ丘の言うとおり、オカルトにも、石動美也にも近づけて一石二鳥。これはその為のサインなのだから。
 これでよし──直也が微笑む。すると──

 パンッパンッ!

 背後から突然鳴らされた二つのクラッカーに背筋をビクリ、ふわっとしたテープの波が彼の頭に降り注ぐ。
 振り向けば四回生で部長の柳田邦彦、そして三回生の緑ヶ丘翠がいる。二人は直也が書き終えるのを待ち構えていたらしい。
 柳田は知的な眼鏡の奥で瞳を閉じ、なにか感慨深そうにうんうんと頷いている。その顔も、クラッカーを手にしているとあっては妙に胡散臭い。が、逆に、満面の笑みでクラッカーを振ってはしゃぐ緑ヶ丘にパーティーグッズは良く似合っている。派手な金髪がそう感じさせるのかもしれない。
「あの…」
 直也はサプライズの誕生日パーティーに招かれた主役のような照れ笑いだった。
「入部しただけで随分な祝われ方をするもんですね。さすがになんか、気恥ずかしいと言うか……」
 被ったテープの束ごと頭を掻く直也──しかし、そんな彼を無視したのは緑ヶ丘だった。
「よっし! 建前があれば、飲みに行くのがこのサークルの流儀よ! 今日は飲むぞー!」

 

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