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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <四十一>

   

 金丸警部の通夜が行われた。そこに現れた怪しげな老人。その正体とは?

 

 
 霞ヶ関に着くと、大きな白い花輪が入り口を挟むように二つ置いてあった。中に入ると香典を渡し、記帳した。マヤの時にも疑問に思ったが、京子が記帳する際、苗字を書かずに京子とだけ記している。まるで夫婦かの様に。そういえば俺は京子の苗字を知らない。京子に苗字の事を尋ねようとした時、高崎と吉高がやってきた。
「斎賀さん、京子さん。遠い所、わざわざお越しいただきありがとうございます。通夜は会議室で行われていますので、ご案内します」
「とんでもないです。ありがとうございます」
 高崎と吉高の後を着いて行くと線香の香りと共に、金丸の大きな遺影が見えてきた。広い会議室では、沢山の人で賑わっている。喪服の者、制服の者。遠くの方に山根の姿が見えたが、誰か隣に見たことのない女の人と一緒に居る。そしてその女の人はしきりにハンカチで目を拭い、それを山根がなだめている。そうか、あの人は山根の前妻。金丸の母親か。
 俺と京子は山根の元へと歩いて行き、声を掛けた。
「山根さん。今回の事は本当に残念です。なんとお悔やみしたら良いのかわかりませんが……あの、その……」
「お辛いこととは存じますが、どうかお気持ちをしっかりお持ちください。心からお悔やみ申し上げます」
 どもった俺に、京子が凛とした表情で続きを述べた。
「斎賀さん、京子さん。ありがとう。あっ、前妻の洋子です」
 紹介された山根の前妻は凄艶で、金丸に良く似ていた。必死で涙を拭いながらも、俺達に深々と頭を下げた。
 金丸の遺影に下には「金丸隆宏警部」と書かれている。おや? と思いつつ凝視していると、山根が口を開いた。
「殉職した警察官は二階級特進します。これで私と同じ、隆宏は警部です。ですが、こんな形で……」
 山根は鼻をすすり、涙を堪えた。深く深呼吸して俺の方へ向きなおしたが、その目には涙が滲んでいた。そうだ。辛くないはずがない。山根は必死に自我を保っている。でもひょんなことからそれが全て崩れ去ってしまう可能性がある。そうなれば、心が崩壊してしまうかもしれない。金丸は可愛い一人息子でもあり、自分の右腕として働いていた部下でもある。二つの悲しみが一つになった時、哀傷が心を切り刻むだろう。

 

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