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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode29

   

 気分転換に夏祭りへ行くことになった魔夜達。ケンさん家族と久しぶりに出会うことになり……。
 本格ミステリー「44口径より、愛を込めて」

 

「私も、松野さんの無罪を証明出来るよう、全力で情報を掻き集めようと思っています。もし魔夜ちゃんも何か情報を得ることがありましたら、私に教えてください。私も、得た情報は全て提供します」
 私と同様に、日向野先生も松野さんの無罪を信じてる。そう確信した。ただ、その先に待つのが受け入れがたい答えだったとしても、私も日向野先生と戦いたい! そう思った。
「はい!」
 私が落ち着いたのを見計らって、日向野先生は帰っていった。
 暫くすると、大雅と陽太君が帰って来た。
「お帰り」
「魔夜、どうした?」
 ただいまと言うより先に、大雅は泣き腫らした私の顔に気が付いた。
「ちょっと、アレルギーで……」
 苦しい答えだ。
「何のですか?」
 横から、陽太君が問うた。
「……やっぱり、目にゴミが入って」
「魔夜!!」
 咎めるような、呆れた声で溜息混じりに大雅が私の名を呼んだ。
「……さっき、日向野先生が来たの」
 また、心配させる。私はそう思うと、どこまで話すべきか迷った。
「先生、松野さんの他に犯人がいるって思ってる。だから、松野さんが無罪だって証明出来る様にしたいって言ってくれた。私もそう思う。でも、安心して。私は、これ以上、クビ突っ込むつもりはないから。さ!」
 精一杯、笑って見せた。
「ちょっと、顔洗ってくるね。そこのお煎餅、先生からの差し入れだから」
 私は、逃げるようにキッチンへと飛び込んだ。本当はバスルームに飛び込みたかったのだが、前回と同様のボロアパートに、生憎そのような気の利いた設備は無い。
 気分を変えようとキッチンの水で、顔をバシャバシャ洗った。
 さぁ、笑顔。笑顔。松野さんに言われた言葉を、何度も何度も心の中で繰り返した。
「大雅、陽太君。今お茶淹れるから」
 一旦水を止めると、濡れた前髪から水滴が落ちた。先に手拭きを取って、顔をゴシゴシ拭いた。
「魔夜さん」
 火にかけた薬缶をジッと見つめる私に、陽太君が言葉を投げた。
「明日、蛍祭りがあるんですよ。行きませんか?」
 そう言えば、入院中に陽太君が言っていた。明日なんだ。
「いいわね。気分転換になるかも。折角なら浴衣着たいね」
 明日、浴衣を買いに行こう。ふと、大雅は明日、浴衣を買いに付き合ってくれるかと考えた。今はお店もないし、どうせなら一緒に選んで、気に入ってくれたものを着たい。
「陽太君も、浴衣着るよね?」
 どうせなら、皆で浴衣着てお祭りに行きたいとも思った。なんだか、高校生みたいだけど。
「魔夜さんの浴衣姿、凄く楽しみですよ!! 俺は……どうしようかなぁ。でも、皆で着た方が雰囲気盛り上がって楽しいですよね」
「そうだよ。皆で浴衣着てさ、仕事の事とか事件の事とか全部忘れてさ。大雅も着るよね」
 不意に振られ、大雅は「あぁ」と間の抜けた声を出した。
「明日、仕事早めに切り上げて、迎えに来ますね。実は、小春ちゃんとこにはもう話してあるんです。奥さんが、着付けてあげてもいいって言ってくれてるんで、俺も浴衣着れますよ。なんで、魔夜さんも大雅さんも、小春ちゃんとこで一緒に着替えさせて貰いましょう。折角の浴衣が、移動で崩れてもいけないんで」
 私は、頷きながらインスタントの粉っぽい緑茶を二人に差し出した。日向野先生の持って来てくれたお煎餅の相棒には、役不足な緑茶だなと思った。
 陽太君は、お茶を飲み終えて直ぐに帰って行った。
 大雅に明日デパートに付き合って貰えるか尋ねると、二つ返事で承諾してくれた。少なからず、大雅も楽しみに思ってくれているようだ。良かった。

 

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