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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode31

   

 松野婦長が犯人だとのニュースを疑う日向野が、魔夜に真犯人を突き止めたいと相談するのだが。
 本格ミステリー「44口径より、愛を込めて」

 

 私が好きなのは、大雅だ。けれど、頼りにしているのは陽太君だ。私も小春ちゃんと同じで、陽太君の事を騎士(ナイト)の様に思っているんだと思った。
「少し、何か食べていく?」
 奥さんの声に、ハッとした。気が付いたら、ケンさん家の前だった。
「実は、結構食べてて」
 大雅が言った。
「あたしも。陽太兄と魔夜さんいなくなっちゃったから、その間に大雅さんといっぱい食べちゃった」
 小春ちゃんが膨れるように言った。
「私も……大丈夫です」
 続いて私が言うと、陽太君が「俺も」と続けた。
 奥さんが、儚げに微笑みながら頷いた。
「陽太君、気を付けてね。魔夜ちゃん、大雅君、今日はありがとう。また遊びに来てね」
「陽太兄、またね! 魔夜さん、大雅さん、また来てね!!」
 奥さんが頭を下げ、小春ちゃんが手を振った。
「うん、またね」
 言いながら、私は陽太君の少し後ろを着いて歩く。彼の背中が、いつもより温かく見えた。
 帰宅中の車内でも、玄関先の別れ際でも、陽太君はいつもと変わらず笑っていた。まるで私だけが、特別意識しているようで歯がゆかった。
「また明日」
 陽太君の声が、いやに耳に付く。
 私は外で立ち尽くしたまま、陽太君の車が走り去るのを眺めていた。大雅がどうしたのかと問うまで、私は自分の行動すら頭に入っていない程だった。
 家に入ると大雅が何か言いたそうにしていたので、私はもう寝ようと言って、言葉を出させないようにした。きっと、明日になればもっと冷静になれるはず。そう信じて、早々にベッドへ潜り込んだ。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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