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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <四十四>

   

 ネズミの大群を率いる謎の肉の生命体。これは服部が動き出したとしか考えられない。俺たちは服部邸へ急行した。

 

 
 俺は京子をラットと共に家に居る様に指示し、ラットに言った。
「ラット! 何かあったら京子を守ってくれよ。俺はまた捜査に出なきゃいけない。男なら守れるよな?」
 俺はラットの頭を力強く撫でた。それに応える様に、ラットは強く頷いた。俺は京子を抱擁し、必ず帰ってくる。と約束した。
 車に乗り、警視庁へと向かう。その道中、逃げ惑う人々を何度も目撃した。これはまるでクーデターだ! これは絶対に偶然ではない。服部の犯行だ!
 警視庁の来庁者用の駐車場に車を止め、館内まで走った。警視庁内は混乱で埋め尽くされており、電話が至る所でなっている。職員はその対応に必死だ。殺人課まで辿り着くと、山根のデスクまで早足で向かった。

「大変な事になってますね。山根さん。金丸さんの葬儀は?」
 山根は少し視線を落とし、呟く様に口を開いた。
「今朝、無事出棺し、焼き場で別れを告げました。私は大丈夫です。それよりこれを見て下さい」
 山根が俺にタブレットを差し出した。そこに映る映像はこの世の物とは思えない光景だった。
 得体の知れない肉の塊がゆっくりと歩く。目も鼻も耳もないが、左右に分かれた肉が足の様になっていて、体を揺らして歩いている。それに続くかの様に何千匹ものドブネズミが地面を覆い尽くす。そのドブネズミが人に群がり噛み付いている様だ。その人は地面に倒れ込み、暫く痙攣した後、動かなくなった。
「今、自衛隊と機動隊が都心部へ向かい、殺鼠剤にて処分する予定です。斎賀さん! これは」
「えぇ、服部が動き出したんでしょう。都心部を集中的に狙う。明らかにこれは天災ではありません。人為的な猟奇殺人です」
 そこで高崎が顔を蒼くして走ってきた。息を切らし、肩で呼吸している。
「どうした! 高崎?」
「大変です……廣瀬の遺体から……脳が……消えました」
「?」
 廣瀬の脳が消えた? つまり、何者かによって盗まれたと云う事か? 一体何の為に? 
「犯人は服部だ。今直ぐ服部邸へ向かうぞ。任意同行させろ!」
 高崎は急いで車を取りに行った。
「斎賀さん。行きましょう」
 車に乗り込んでパトランプを回転させ、服部邸へと急いだ。だが、都心部へ入るとまるでゾンビのように人が徘徊している。スピーカーで道を開けるように指示するが、誰も耳を傾けない。足を噛まれた中年のサラリーマンがフロントガラスに張り付いてきた。
「助けてくれー! 足を噛まれた! 嫁も子供も居るんだ! 家に帰らないと……ウゥゥゥ、ウワァァァ!」
 男の体が痙攣しだし、地面に倒れこんだ。ここは地獄なのか? 地獄絵図とはこの事だ。暫く徐行して人混みを避け、再度急発進した。そこで電話番をしていた森から連絡が入った。
 死体から検出された毒物はエラプトキシンという、海蛇が持つ神経毒で、その量が海蛇の二○倍も検出されたそうだ。機動隊からの報告によると、咬傷行為を行ったネズミは息絶えるらしい。防護服を着ていても、防護服を食い破って中に侵入し、噛まれる。殺鼠剤も効果が無い様で、逆に避難している人々が、息苦しさなどの症状を訴えているらしい。手出しのしようが無い。

 

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