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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season7-1

   

見習い探偵御影は落胆していた。探偵として思わぬ落とし穴にはまってしまい、酒に溺れる週末を過ごしていた。
 だが、そんな彼に思わぬ試練が待っていた。

 小柴から、明日ひとりで“尾行”の任務をしてもらいたいと、任された。

 ひとり立ちへの訓練のようなものだった。だが、物足りなさを感じずにはいられなかった。これまで簡単な依頼だったが御影にとってはうだつがあがらない。
 まだまだ素人だが、探偵として見習いですらないと示されると、さすがの御影も全員の前で憤りの感情をあらわにした。

 日々、ちからをつけるためにサポートを森谷がしていたが、思いのほか独学で、探偵としての目が具わっていたこともあり、異例の速さで試験をさせる。

 小柴の命令はそのためのものだった。

 嫉妬の念をこめているほかの探偵たちも、御影の鋭い着眼点に一目置いていた。素質と才能、その存在を目撃しているのだから。

 御影はまだしらない。秤に掛けられている状況をどうやって乗り越えられるか。そして試験をパスすることができるのか。

 そして本来の探偵としての仕事がどういうものかを再認識する。

 

 見習い探偵は、見習いですらなかった。やっと“見習い探偵”の称号を与えられるだけの下地ができた。というところまでだろうか。

 近年稀にみる優れた探偵候補者の御影 解宗。その探偵としての資質は、将来有望であると周囲は認めて…、いやそうではない。鋭く睨まれていた。

 ともにライバルである、という視線だ。
 御影にとっては光栄である。

 探偵にとっての着眼点、探偵の目が具わっている御影に検定前に呼称するという異例に、探偵社の従業員は嫉妬の念が込められていた。

 探偵の目。プライベートアイ。それが御影の武器である。

 この日、御影は小柴からの指示でひとりの会社員女性を身辺調査を、一人で任されることになった。

 尾行のみの調査だ。ターゲットがなにをしているか、それをカメラで撮影し、だれと会ってなにをしているかの調査記録報告書を仕上げ依頼人に手渡せる状態まで収集し整理させる。これが任務となった。

「それだけ?」御影は物足りなさを感じていた。

 まったくもって華のない依頼だ。達成感がない。まさに影のように動いて、終わるだけだ。
 本来それが御影にとっての役目であったが、どうも日の当たる依頼に携わってしまう。

「御影くん、依頼かね」森谷がいった。

「はい、どういうわけか」耳元で囁くように御影は森谷にいった。「ひとりで調査してこいって、小柴さんにいつものように命令がくだりました。どうにかなりませんかね、あの女王様気質」

 森谷は鼻で笑った。「そりゃむりな相談だな。だれにも手に負えない。氷室くんだって無理難題、解き明かせない謎というのかな」

「マジすか。そりゃ性質がわるい」御影の発言は逐一聴かれていることを自覚しなければならない。

 背後でにらんでいる目が光っている。

「うっ!」御影は背筋が凍てついた。「この気配、後ろにいるかもしれない。このまま逃げよう、いってきます」

「はい、いってらっしゃい」森谷は微笑んでいた。「勘も見事なものだ」

 大地が無関心のように視線だけ送ったが、すぐに読書に意識がもどる。

 雲田は盗聴器の手入れと個数チェックをしていた。それと備品整理。雲田の仕事ではない。むしろ事務員たちがこういう管理をするべきだが、雲田は執拗に管理していた。

 上川、火守はすでに外出している。以前から依頼を受けていたものにとりかかっている。
 水桐は今日から別件での新しい調査が入ってすでに外出していると、御影は出社したときに聞かされた。

 暇なのは、森谷と大地だということだ。雲田は勝手に忙しくしている。

 森谷もそのすがたは本物ではない。フェイクである。仮の容姿。日常レベルで変装をしているのだ。恰幅のいい体形もフェイク。顔も特殊メイクで40代後半の顔立ちにしている。この時期その特性が仇になり、外出は避けている。車で移動やクーラーの効いた施設内や屋内でなければ仕事はできない。
 ひとり蒸し風呂サウナ状態で歩行しているからだ。

 事務員はいつものように報告書や電話対応に追われている。そして担当探偵のサポートも怠っていないが、大地がほかの探偵たちのサポートをするのにはちょうどいい。危機回避能力もある。身の危険を感じれば、すぐ安全圏へ誘導できる。

 御影もサポートとして活躍できるだけの能力がある。ほかの探偵たちの目が疲弊しているとき、代用して物事の判断が速やかにくだせ、推理できるのだ。

 後方支援としてこのふたりはもってこいの人材であった。

 氷室は相変わらず警視庁へ呼ばれてとんでもない事件に助言をしているとのことだった。

 御影はもう羨ましく思ってもいない。氷室探偵とタッグで事件の調査をすることを望んでいない。なぜなら、いつか追いつくための原動力になっているからだ。

「さーて、依頼人をまずみつけるか。てか西新宿だから、すぐそこにいるらしいんだよな」御影はターゲットをみつけ、尾行することからはじめる。

 

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