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ラブストーリー

まどろみ

   

 いつもきまって二十三時には寝るようにしている。
 別に規則正しい生活をしたいわけじゃない。死んだ恋人と夢の中で会うことができるからだ。

 

 
 笹森英太(ささもりえいた)はいつも午後十一時には寝るようにしている。
 決して規則正しい生活を心がけようとしているのではない。少しでも長く、夢を見たいと思っているから。

 夢ではいつも決まった人物が出てくる。佐野美有(さのみゆ)。かつて笹森とつき合っていた少女。くだらない口喧嘩をした後、交通事故で亡くなった。笹森の後悔の種。
 場所は様々だった。ある時は学校。ある時は遊園地。映画館。帰り道。だが今のところ一度も出てきていないのが、水族館。ちなみに事故前の喧嘩の舞台はそこだった。
 夢で何をするのかといえば、一緒にその場に適応した行動をとる。
 例えば学校。
 二人の席は隣同士。一緒に授業を受ける。時に数学だったり、英語だったり。何にせよ質問が教師から飛んできて、佐野が指名される。
 彼女は答えられない。うつむく。横から笹森が正解をささやく。彼女の顔が上がり、笑みを漏らす。のんびりとした声で先ほど聞いた答えを口にする。先生が正解、と嬉しそうな笑み。同じ笑みが佐野の顔にも広がっている。
 ありがとう。笹森へ小声の感謝。後でアイスでもおごれよ。あえて彼女の方を見ず、素っ気なく放たれる言葉。
 季節は夏だった。夏の中学生時代から、時は動いていない。夢の中ではずっとあの夏を繰り返している。

 

-ラブストーリー


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