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SF・ファンタジー・ホラー

RAT <四十七>

   

 遂に残忍な殺人レースが終わった。そして俺はある約束を思い出した。
 小説『RAT』最終話です。

 

 
 家に帰ると、ラットを抱きかかえ部屋に入った。ラットの血は止まらず、みるみるうちに弱って行った。
 京子に事件の真相を伝えると、手で顔を覆い泣き出した。俺は京子を抱きしめたが、なんて言葉をかけて良いのか分からなかった。
「やっぱり……怪しいと思ってたの。あの実験室を見たときから。もっと早くに君に言っていれば、マヤも死なずに済んだのかな? ごめんね……マヤ。ごめんねぇ……うわぁぁぁぁん……」
 俺は京子の背中をさすりながらきつく抱きしめた。京子も俺の背中に手を回して俺を抱擁した。火照った京子の頬が熱く俺の頬に涙が伝う。暫くして、少し落ち着いた京子にポケットからノートを取り出し、渡した。
「ジジイは、京子のことを本当に愛していたみたいだよ」
 ノートを開け、暫くしてまた涙が溢れかえった。ポタポタと涙を零し肩を震わせている。俺は京子の隣に腰掛け、京子の肩を掴み抱き寄せた。京子は俺の膝の上で泣き崩れ、ありったけの涙を蒸発させた。
 泣き疲れた京子は目を真っ赤にして子供のように俺の膝の上で眠った。俺はラットをソファーの上に寝かせ、頭を優しく撫でた。けなげに生きようとしているラットに俺は声をかけた。
「ラット……無理しなくていいよ。お前は充分俺達に幸せを与えてくれた。笑顔をくれた。優しい時間をくれた。だから、もういいんだよ。あとは自分で選ぶんだ。道は右か左。それしかない。気を遣わなくていい。ゆっくり休んでな……」
 そして俺は部屋の電気を切った。
 

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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