幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

童話

ルナードアイランドストーリー <一>

   

 ルナード島に住む少年ロノは記憶を失った少女ティアと奇妙な出会い方をする。
 ロノはティアと出会う事で、記憶を探すという冒険がはじまった。

 

 
 まわりは海に囲まれた小さな島
 レンガの家が立ち並ぶ紅の街
 そこには、市場や酒場。噴水を囲み色んな店がある
 普段は人で賑わうこの街も、夜になると静まり返る
 聞こえるのは、店を閉め終えて食器を洗う音
 微かに聞こえる酔っ払いのいびき
 そんなこの島ルナードに一人の少年がいた

「今日も一日がおわるなぁ」
 少年は天井窓から覗く月を見上げながら今日の出来事を思い返していた。
「今日は疲れたよ…おじさんも兄さんも店にいないんだから、独りで店番だなんて……あれ? 何だか今日は妙に静かだなぁ」
 いつもなら、酔っ払いがうわ言をいいながら歩く声や、夜泣きに困ったおばあさんが子供をあやす声などが聞こえる。
「そうだ! 今日は満月だし、噴水までいって月を見に行こうっと!」
 少年は部屋をでて噴水までの一本道を歩いた。
 レンガ造りの家からは、あたたかく、幸せな光が点々としている。
「やっぱりここは好きだなぁ。いつ来ても何だか落ち着く」
 潮風が少年の髪を扇ぎ、夜の景色が少年に一日の終わりを告げている。
「あれっ?」
 不意に少年は噴水に手を入れてみた。
「今日は水が暖かい。どうしてかな?」
 不思議におもい水面を覗き込んだ。
「うわぁぁぁ~」
 水面に写る満月から真っ白な手が少年の手をつかんだ。その手はみるみるうちにひじ、肩。気がつけば、水面から一人の少女が現れていた。
「うわぁ~何? どうなってるの……幽霊じゃぁないよね?」
「あの…私…」
「心臓がつぶれるかと思ったよ。えっ、えっ。噴水の中から? 大丈夫? 服が…濡れて…ない……?」
「……」
 少年はいったい何が起こったのか、心臓の鼓動とともに、頭がズキズキしていた。深く深呼吸をして何とか心を落ち着けさせ、ゆっくりと話した。
「……僕はロノ。この近くに一人で住んでるんだ。君、見かけない子だね? どこから来たの?」
 少女もかなり困惑しているらしく、首を左右に振りながら話した。
「何だかあんまり憶えてないの……名前は…ティア」
「大丈夫? 僕も頭の整理がつかないけど、夢じゃないんだよね」
 ロノは右の頬をグイッとひねり、これが現実であることを確かめた。
「ティア、どこの家かも覚えてないの? だったら僕の部屋にきなよ! 温かいスープでも作るよ」
 ティアは無言でうなずき、ロノは家までの一本道を歩きだした。
 部屋に着いた二人は暫くの間、会話がなかった。ロノもティアにどう接すればいいのか戸惑っていた。鍋が煮える音と野菜を切る音だけがレンガ造りの部屋に冷たく響いていた。
「待ってな、もうすぐできるから! 今朝とっておきのミルクを買ってきたから、とってもおいしいよ!」
 クリーム仕立てのスープが慌ただしく呼吸している。
「おまたせ。さぁ、温かい内に食べな」
 淵の欠けた白いお皿に、木の底の深いスプーン。
 ティアはユックリとスープを口に運んだ。
「おいしいよ! これ。凄くおいしい!」
 初めて笑顔を見せたティアに、ロノは暫く見とれてしまった。
「よかった! いつも作ってるから味には自信があるんだ。それにとっておきのミルクだしね……それで何か思い出せそう? なんでもいいんだ」
 ティアはスプーンをテーブルに置くと、ゆっくりと話し始めた。
「私、すごく遠い所から来た気がするの。パパやママはとても優しくて、いつも私に歌を歌ってくれたの。それと、とっても大きな犬が私の親友。ルーンって言うの」

 

-童話

ルナードアイランドストーリー <全7話> 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話