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童話

ルナードアイランドストーリー <二>

   

 初めて街を見るというティアの言動に戸惑いながらも、ロノはティアを市場へと連れて行く。そこでティアは一軒の怪しい佇まいの店の前で立ち止まる。

 

 
 噴水の市場ではすでに沢山の人でにぎわっていた。
「今年一番の大物だよ! 脂がのってて舌がとろけるよぉー。どうだい! 奥さん!」
「少しまけてくれるんなら、頂こうかしら?」
「それじゃあ、30ミルでどうだい?」
「あら。それじゃあ今晩はお野菜抜きになっちゃうわ。20ミルにして頂戴」
「奥さんは島一番綺麗な奥さんだから仕方ない! 20ミルでいいよ!」
「あら! 調子のいい事。気分がいいから25ミルでもいいわ」

 いたる所でこんな会話が聞こえてくる。

「ティア、こっちだよ! そっちはたわし屋さんだよ!」
 まるで初めて街を見るかのようにティアは、はしゃいでいた。
「こっちからいい匂いがするよ」
 まるでウサギの様に鼻をクンクンさせながら匂いをたどるティア。
「パン屋さんもあるからね。でもパンは家にまだあるから!」
 ロノの声はティアに全く届いていないようだ。ティアはスキップしながら、たわし屋のかどに入っていった。
「チョットまってよーコッチだってばー」
 ため息をつき、小走りでティアの後を追った。
 たわし屋のかどを曲がるとティアが一軒の古びた店をじっと見つめて立っていた。
「ココって何だか知ってる気がするの」
 さっきまでのはしゃぎ様から一転、急に真剣な目つきでロノを見た。
「えっ! 知ってるの?」
「ううん。そんな気がするだけ。だって私、街を見るの産まれて初めてなんだもん」
 目をまん丸にして驚くロノ。
「初めてって、今まで買いものなんか……」
 途中まで言いかけて、ハッと黙り込むロノ。記憶を無くした少女の存在を忘れていた。
「ここだよ! 昨日言ってた不思議な事に詳しい人がいるって。骨董品屋なんだ」

 

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