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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season7-6

   

 御影たちは嘘情報を流した。遠藤はまんまと嘘情報を信じて行動に移した。こうもあっさりと信じてしまうのは、信憑性がある情報だと思わせることが重要だった。

 水桐はその才覚がある。欺き騙すだけの話しを作り上げる。そして御影と雲田も協力して、セリフを合わせ流した。

 遠藤の間抜けで滑稽な行動を御影は録画した。一部始終録画に成功した御影はふたたび新橋の遠藤が構える探偵事務所の前にいた。

 問いつめる。遠藤が違法を犯している証拠をぶつける。

 そして押し問答の諍いがはじまるが、一方的に攻撃をしているのは御影と水桐だった。
 反論はないが、反発はしている遠藤だった。

 証拠となる盗聴やら無線傍受の機器が室内のカーテンの向こう側にあるとにらむが、調べさせてはくれない。だから対話で遠藤が折れることを待つ。

 バレても開き直っている遠藤に、御影も水桐もあきれ返っていた。しまいには最後の犯人を教えろというのだ。
 朝永警部とともにメディアに露出して事件の経緯などをインタビューで答えて調子に乗っていた。

 そのため最後の犯人がわかない。これまでの信用をあっとういうまに失墜する。
 なりふり構わずに遠藤は水桐に頼んだ。

 すべての証拠はない。あるのは遠藤が嘘情報で無線傍受しているという証拠だけ。

 貴金属店の事件を事前に傍受した可能性はあるが、その証拠はない。
 それを指摘されると、遠藤のほうが一枚上回っていた。

 遠藤の探偵事務所に電話が鳴って会話が中断した。もうこれいじょう話すこと、攻めることはできなかった。

 情けないが、御影たちは退散した。

 

 遠藤が事務所から出てきた。

「餌にかかった」御影たちが車のなかから見ていた。

「あとは追跡する。そして御影くんが録画する。遠藤がこちらの嘘情報に踊らされた証拠になる」雲田が淡々といった。

「そういう狙いね、なるほど」水桐がいった。「あなたたち意外と名コンビね」

「以前、コンビを組まされたときにいろいろ教わって、だからなんとなく雲田さんが考えていることをおれも考えてみたら、こう動けるようになっただけです」御影は助手席に移った。

「ふーん、すごいじゃない。しっかりと先輩たちの背中を見習っているわけね。どおりで解釈が早いわけだ。わたしなら少しは反発しちゃうからね。きらいなひとには特に」水桐はだれを罵っているかわかるようにいう。

「水桐探偵、くちは災いの元ですよ。あなたの身の回りに盗聴器や発信器がないとは限らない」雲田はいつどこに自分の武器を仕掛けているか、油断しているとすべてを知られてしまうのだ。

「ちょっと、ほんとうそれやったら許さないからね」水桐は脅迫寸前な口調だった。

 雲田はバックミラー越しで微笑みだけ浮かべた。

「かー、根暗もいいとこ」水桐は小さくつぶやいた。

「水桐さん、いいから追跡開始です」御影はハンディーカメラを録画モードにした。

 遠藤は自社の車に乗り発進させていた。そして池袋まで車を走らせた。メトロポリタンのホテルに泊まっている、という情報を流したのだ。
 もうひとりの犯人の情報だ。だが、まだ遠藤はその犯人の正体までは掴んでいない。

 道代の名前が出たことで信じた。

「御影くん、なかなかの演技よ。こうも引っかかるとはね。お笑い種よ」水桐はいった。

 御影は、無線を使い遠藤が傍受するであろうその情報を話した。

“道代が捕まった、どうすればいい? もう逃げようにもどうにもならない。宝石だって警察が発見しちまった。だからやっぱりおれが持っていればよかったんだ。くそっ”。

 そして、雲田が会話の相手となった。
“シゲマツ、いまどこにいる?”。

 シゲマツとは架空の名前だ。ただ第三の犯人、つまりが黒幕がいると思わせた。

“池袋のメトロポリタンホテル、宝石は数億の取り引きだった。だからこんな高いホテルに雲隠れしたんだ。くそっ、これじゃ無一文だ。あんな無能なやつを相棒にしたのはまちがいだったな”。御影が演じている。

“そういうな。いまから迎えにいく。だから池袋のメトロポリタンホテルの何号室にいるんだ?”。雲田が最後のセリフだった。

“9001号室”。御影はニヤリと微笑んだ。

 遠藤はそのまま事務所を出た。

「着いて驚愕、すぐに嘘情報ってバレるでしょうね」御影はあざ笑っていた。

「そうね」水桐はすっきりした顔で遠藤の滑稽な行動を見ていた。

「どういうことだ?」雲田が説明を求めた。

「いや、9001号室なんてないんですよ。そこまで客部屋数はないですから、フロントで9001号室はどこですか、って小男は叫んでるでしょうね」御影の策略にまんまと嵌った。

「そうか、そりゃいい。滑稽な行動を見て、違法を嗜める。それがこの顛末ということだね」雲田も高揚しているようだ。よくしゃべる。

「そういうこと。あなたもご苦労さま」水桐が雲田に礼をいった。

 御影はちらっと水桐を見つめていた。

「いちおうね。おなじ探偵社のメンバーで、協力してもらったから」ふてくされながら水桐はいった。羞恥心があるようだ。

「だれだって感謝は照れますよ。言うのもいわれるのもね」御影はいった。

「感謝してくれたの?」雲田には通じてない。

「いいから、追跡して」水桐は窓の外をみていた。もう結果はわかっている。あとは録画を残すことにつとめるだけだった。

 御影の持つハンディーカメラは遠藤の車のバックナンバープレートをとらえていた。池袋のホテルメトロポリタンでの行動も単独で撮影しつづけていた。結果、徒労に終わり引き返す遠藤を撮影して、ふたたび新橋の事務所にもどってくるすがたをとらえて撮影は終わった。

 

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見習い探偵と呼ばないで! Season7 <全8話> 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話第8話

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