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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode34

   

 万事休す!!
 そう思ったとき、全ての事件の謎が繋がった。

 本格ミステリー『44口径より、愛を込めて』

 

 万事休す!目を瞑り、そう心の中で叫んだ刹那。

「そこまでだ!」
 倉庫の重い扉が開けられる音と共に、聞き慣れた声が倉庫内に木霊した。それに、男達の足跡が止まる。
 恐る恐る目を開けてみると、扉の向こう側で赤い回転灯が無数に光っていた。
 唖然と座り込む私の前に、陽太君と塚田君が歩いてきた。
「魔夜さん。助けに来ましたよ」
 相変わらず、陽太君がヘラヘラと笑いながら言った。
「……遅いって……」
 考えるより早く、私の口からそう漏れた。
 陽太君の横で塚田君が待機していた救急車に向かって担架を呼び、大雅を病院へ搬送する準備を進めてくれていた。背後では、私達を襲った五人の男達が、次々と手錠を掛けられ連行されていく。
 何もかもが一瞬の出来事だった。
「ヒーローは、本当にピンチにならないと助けに来ないって、よく言うじゃないですか」
 よく見ると、陽太君も塚田君もびしょ濡れだった。外で、突入する時期を伺っていたのだろうか。
 何故だか陽太君を見上げたまま、私の身体は動かなくなっていた。自分が安心しているのは、実感出来た。同時に、身体中の力までもが抜けてしまった様に感じたから。
「腰抜けたんですか?」
 そう言いながら、陽太君は私をおぶってくれた。温かくて、逞しい背中だった。こんなに安心できる背中が近くにあったんだと思うと、今まで気付かなかった自分を鈍感だと罵ってやりたくもなる。
「……陽太君、少し、泣いても良いかな……?」
「いいですよ」
 いつものチャラけた声ではなく、優しく温かい声で、彼はそう返事してくれた。
 私は、陽太君の首に腕を回し、しがみつくように少しだけ泣いた。
「……怖かった……」
「はい」
「本当に、怖かったよ」
「頑張りましたね」
 いつかの話を思い出した。ケンさんも幼い頃の陽太君に、今の陽太君みたく安心を与えていたのかな。ケンさんの背中を追いかけていた少年は、少しずつ、でも確実に長年憧れ続けていた背中に近付いていると思う。
「陽太君、どうしてこの場所と状況がわかったの?」
 少し落ち着いた私は、おぶわれたまま質問した。
「俺の渡したお守り、持っていてくれたでしょう?」
 私は鞄から、陽太君が以前くれたお守り袋を取り出した。
「中に、小型のGPS発信機と盗聴器が入っているんです。勿論プライバシーに関わりますから、普段盗聴器のスイッチは入れてありませんよ。魔夜さんが、不審な動きをした場合のみ、こちらで一時的にスイッチを入れていました。俺と塚田で携帯電話を使い、二十四時間体勢で監視していたんです」
「こうなること、解っていたの?」
「そこまでは言いません。ただ、最悪の事態を考慮しての対策です。それが、本当に最悪の事態になっただけ」
 陽太君が、あははと笑った。
 陽太君がパトカーと一緒に停められていたワンボックスカー内に私を下ろし、自分も乗り込んだ。外で警察官が無線に向かって、被害者を保護したと伝えていた。
「魔夜さんも、病院へ行きましょう。念の為ね」
 陽太君が車のスライドドアを閉めると、車はゆっくり発進した。
「陽太君はヘロイン密売と虐殺事件との関連性を調査していた訳よね、だから塚田君の協力を必要とした。そして、捜査中ケンさんが亡くなり、松野さんが亡くなり、丸井さんも亡くなった。皆、ヘロインと結びつければ虐殺事件に関係していそうでしていない様に思われる。どれもヘロインには関係しているから。そして、ヘロイン密売に関係していると疑われた賢木田さん、坂下さん達は影すら見せていない。結局、今までの調査内容含め、この事件って一体なんだったのかな?」

 

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