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ラブストーリー

レンタル彼氏(3)

   

「レンタル彼氏」を利用し始めた由香里であったが、
いつしか由香里の心は、「レンタル」であるはずの「サトル」への思いが募り始める。
いつしか、由香里のサトルへの我が侭な思いが心の中に広がり始め…

 

松下由香里が、レンタル彼氏を利用するようになって1ヶ月が過ぎた。
この1か月間に、由香里が「サトル」を指名したのは合計して3回にもなっていた。
最初に「サトル」に出会った時の心躍るあの快感が、再びよみがえり、その後2回もまた利用してしまった。

その度にサトルの優しさや、由香里本人に対する接し方が、『本当は演技なんかでは無くて、このまま私の本当の恋人になってくれたら…』等と、甘い我が侭な夢を見てしまう事もあった。

4回目に当たる今日は、由香里はどうしてもサトルに「特別」な何かを求めてしまっている自分に気づいていた。
昨夜、仕事から帰った由香里は、久々にクッキーを焼いた。
元々お菓子作りは得意だったのだが、最近は「誰かの為に何かを作る」と言う事は、全くなかった。
しかし、どうしてもサトルに『このクッキーを渡したい』と言う強い気持ちもあり、必死で焼き上げた。
ハートや星の形。バニラとココアの二種類の生地からは、甘い香りが漂っていた。
それを、丁寧にラッピングをして、準備してきた。
由香里は、白いコートのポケットに手を入れたまま、サトルが来るのを待っていた。

「由香里さん。待たせてしまってすみません。」
気が付くと、グレーのダッフルコートにジーンズ姿のサトルが息を切らして走ってきた。
今日は、駅近くの公園で待ち合わせをしていたのだ。
いつもなら、暖かいカフェ等で待ち合わせするのだが、今日はこのクッキーを渡す為にも、高校生のようだが、公園で待ち合わせをしたかったのだ。
「寒く無かったですか?」
「全然平気よ。ちょっと早くついちゃって。ごめんね。走らせちゃったわね。」
そう言うと由香里は自分より少し背の高いサトルの頬に両手を充てて
「ほらね。今日はポケットに手を入れてたから温かいでしょ?」
「ほんとですね。温かいです。」
サトルは頬に充てられた由香里の手を両手で触って確かめそして、自分の頬から外した。
「今日は、どんなコースで行きますか?行きたいところとかありますか?」
サトルが尋ねると、由香里は
「その前にこれ。貰って。昨日作ったの。クッキー。」
と言って、ラッピングしたクッキーの袋を手渡した。

 

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