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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season7-8 END

   

 遠藤の予想外なファインプレーによって、母親がどこにいるか、それを御影と水桐が同時にひらめく。

 タイムリミットギリギリのせいもあり、窮地にあるのは探偵たちだった。

 水上バスに遠藤の母親が拘束されていた。19時まであと10分ほどのところだった。
 遠藤は母親を救出することはできた。

 しかし御影はあることに気づいた。操舵室に奇妙な痕跡がある。

 それはどうみてもなにかしろの細工が施されていると御影は読み取る。

 水桐が警部と電話をしていたが、御影は水桐に頼んだ。
 19時を過ぎた後、この船がどうなるのかを犯人にきいてもらうことを。

 水桐と御影は蒼白になった。このままでは東京湾に飛びだすことになる。

 恫喝警部としてなりあがった朝永警部は、降木に強烈な尋問をする。どうやれば助かるかを、それを教えろと。

 だが、時は刻々と迫っていた。いままさに東京湾へ放り出される寸前だった。

 御影たちは窮地を脱出することができるか。

「第七シリーズ完結」

 

 18時30分。御影たちは豊洲駅に着いた。車を路駐させた。

「もう、けっきょくなにも電話の背景になにか気づくことないって最悪じゃない」水桐は怒鳴りながら車から出てきた。

「しかたないでしょ、思い出せないんだよ」泣きそうな遠藤探偵だった。

「それでも、遠藤探偵はいったでしょ」御影がいった。「海の音、さざ波の音が聴こえたって、犯人の降木は豊洲のららぽーとを選んでいるところをみると、やはりこの辺りの海沿いだということがありえる。おそらく逃げるのに都合がいいのかもしれない」

「なにが都合がいいのよ」水桐はいった。「だいたいここから逃げるってどこへいくのよ?」

 三人は困惑している。

「もう30分切ってる。立ち止まっている暇はないですよ」御影はいった。

「だからって手当たりしだいに動いても、海沿いだといってもね」水桐はいった。

「そうだよ。海沿いにあるのは水上バスくらいだ」遠藤がいった。

 御影と水桐は不穏な顔をみせた。

「なんだって?」御影は聞き返した。

「あんたいまなんていった?」水桐もいった。

「水上バスだよ。豊洲の、すぐそこにあるんだよ。水上バス。浮気調査でターゲットがデートしていたときに乗ったんだ。ちょっと楽しい船旅で、探偵として一番たのしい案件だったな」遠藤は久々に微笑んだ。

 にらみつけるふたり。

「わっ、なんだよその顔は、ふたりとも!」遠藤は反発していた。

「それだ」御影は水桐に顔をむけた。

「それね」水桐も御影に顔をむけた。

 遠藤探偵だけ蚊帳の外だった。「なにがだよ!」

 三人は走った。

「18時45分、あと15分だ。水上バスへ」御影がほえた。

「まったく、突拍子もないことをいうのがお得意ね。小男探偵は」水桐はいった。

「そこにいるのか、そこにいるのかって?」遠藤が短い足で小走りで追いつこうと必死だった。

 そして、ついに見つけた。水上バスが一台停泊している。

 乗り込んだ三人。船内にひとがひとり横たわっているのが外から見えた。
 手足をロープで縛られている。くちをふさぐために細長いタオルで巻かれていた。

「母ちゃん!」遠藤が見つけると船内に入る扉を見つけた。母親に近寄った。拘束されているロープとタオルを取った。
 ふたりはハグをして涙を流して恐怖から開放されていた。

「よかった」水桐は安堵した。「最後は息子が母親を救済、めでたしめでたし」

 水桐探偵のスマートフォンが鳴った。「あっ、警部──」

 御影だけは船内に入っても遠藤の母親を助けるよりも、この船体に違和感を感じていた。

「御影くん、警部から連絡あった。でもこっちも解決したって教えておいた」水桐がいった。

「水桐さん、警部とはまだ電話つながってますか?」御影が船首に顔をむけながら話した。

「ええ、まだつながっているわ。どうして?」

「犯人にきいてみてください。この船体、19時になったらどうなるか」

 水桐は顔が曇った。「警部、ちょっといいかしら、この船って19時になるとどうなるのか犯人にきいてくれる?」

 御影は操舵室に、なんらかの細工がされているのことに気づいた。あきらかに素人が細工をしたであろう導線やなんらかの装置が取り付けてある。

「まずいわよ御影くん、この船、19時になったら自動的に東京湾へむけて出航するみたい」水桐は最悪な結末のステージに立たされていることを悟った。「あと5分よ」

「やっぱりな。この不細工な装置が物語っていた。この処理をしないと」御影はやったこともない処理をしようとしている。

「さすがにそれはできないわよ。雲田さんだってむり。探偵であるいじょうそういう能力はだれも持っていない。警察の関係者じゃなきゃまずいわ」水桐ははじめて脅えていた。不安定な水の上に立たされているためか、自分たちの置かれている状況に恐怖していた。

 背後では遠藤親子は腰が抜けてか動けそうもない。5分で船内から脱出するのは難しい。

 御影はやるしかない。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season7 <全8話> 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話第8話

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