幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

童話

ルナードアイランドストーリー <七>

   2016年2月8日  

 亡者の主と生死をかけた戦いに挑んでどの位の時間が経ったのだろう。
【ルナードアイランドストーリー】最終話。お楽しみいただけると嬉しいです。

 

 
 いったいどれだけの時間がたったのだろう。ロノは傷だらけで息を切らし、それでも主に挑んでいた。
 ティアは涙をながし、泣き叫んでいた。

「ロノもうやめて。ロノが死んじゃう。こんなの勝てっこないよ。逃げようよ。ロノが傷つくとこなんて見たくないよ。お願い。やめて……」
 泣き崩れるティアに不安そうに顔を覗き込むルーン。

「いや……逃げる場所なんてないんだ。ここで逃げたら、僕はティアの騎士として一生後悔する事になるんだ。ティア、悲しまないで。僕がティアを守るから。ティアの母さんも言っていた。前を向いてって。振り向かないでって。この指輪を付けた時から、僕はティアの為に存在するんだ。絶対に諦めない」

 その時、ロノの剣が眩い光を放ち始めた。傷だらけのロノの消えゆく意識。ロノの体力は限界に近づき始めていた。ティアを守る。その一心で立ちこらえるロノに答えるかの様に、次第に剣の光が強くなっていった。その光が頂点に達した時、ロノの一振りの刃が主の体を突き抜けた。
 真っ黒の煙をあげ、悶え苦しむように主は崩れて行った。
 残ったのは大量の灰。その横にたおれるロノ。涙で顔をしわくちゃにしながら、ティアはロノを抱きかかえた。消えゆく意識のなかに光がさしこんだ。暗雲に巻かれていた空に優しく日が微笑んだ。花畑に降りそそいだ灰を肥しに、緑が戻りはじめた。

「ティア、なかないで。僕はティアを守れたかな? こんな僕でも、役にたてたかな。綺麗な景色だね。これがティアの国の景色なんだ。よかった」
「ロノ! しっかりして! お願い。行かないで。私からもう何も奪わないで。パパ、ママ。お願い。ロノを助けてあげて。おねがいだから……」
 ロノを抱きしめ泣き崩れる。ただ呆然と立ちすくむルーン。
「ありがとう。ティア。君に出会えて本当に良かった。悲しまないで。前を向いて。お母さんが言ってたよ」
 ロノはティアの涙を拭う様になぞった。

 突然、ロノの体が光り始めた。ふわっとロノの体が中に浮かぶ。
 閃光のような光とともに、ロノは消えた。残ったのは玉座の間に響き渡る泣き声。そばに駆け寄るルーン。

 柔らかな日差しがそそぐ、綺麗な景色。何もかもが元通り。

「おい、ロノ! 大丈夫か! ひどい傷だ。親父、手伝ってくれ。ロノを店まで運ぶぞ」
 灯台で朝を迎えたランボルギーニ親子の目の前に閃光と共に傷だらけのロノが舞い降りた。
「ロノ……よくやったぞ。ティアを守れたんじゃな。本当によくやった」
 おじさんは優しくロノの頭を撫でた。

 それからどれ位の時が過ぎたのだろう。潮風が柔らかく老人の肌をなでる。夜の景色が老人に一日の終わりを告げていた。月明かりが噴水に反射する。老人のくすり指には指輪がはめられていた。月を見上げ、聞き覚えのある曲を口ずさむ。

「あれから、何年たったかの? わしには夢だったかのようにおもえる。 なぁティア。わしは年老いた。あの綺麗な景色。君と一緒にもう一度見たいもんじゃ。あの日もこんな夜じゃったの。噴水から君がでてきた。ふふっ。懐かしいの、ティア。あぁ、懐かしい」

 噴水に横たわるように、老人は倒れた。腕には花の腕輪が……
 静かな夜が、ある老人の一生を語った。

「おかえりなさい、ロノ」

 

END

 

-童話
-, , , , ,

ルナードアイランドストーリー <全7話> 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話
アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第34話「それでも――――」

   2017/11/20

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】15

   2017/11/20

ロボット育児日記39

   2017/11/17

忠実な部下たち

   2017/11/17

モモヨ文具店 開店中<36> ~帰り行く者~

   2017/11/16