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死神の鏡身 十三話

   

 シャオは暗がりでリクと話をする、まるで人と人の会話の様に。

 

 
「いやに殊勝だな。俺の首をはねるための、なんらかの算段か?」
 シャオはリクがこぶしを震わせるのをみた。
「なめるなよ、私が本気になれば君なんて」
 放たれた殺気、それは紛れもない死神の殺気だった。
 シャオは思わず身構える。
「私はお前みたいな平和ボケしたやつ、一瞬で殺せる」
 その瞬間また、昨日の記憶が脳裏をよぎった。
『毎晩、悲鳴とか銃声とかが聞こえて。いつ自分が見つかるのかって。おびえて暮らす毎日』
 シャオはなぜかその光景を映像で思い出すことができる。
『ずっと、何かが追っかけてくる錯覚があった。今ならわかる、その正体は死。死っていうのは概念ではなく現象。だから常にそこにあって。私の視界から外れることなんてなかった』
 まるで彼女が見てきたもの、感じてきた物を一緒に見て、体感したかのように。
 そうして、シャオの顔に笑みが浮かぶ。
「今日は……。そうだな」
 声が情けないことに震える、それを無理やり押し込め。自分の意思をしっかり告げる。
「休戦を受け入れよう。だからそんな怖い顔するな。」
 驚いたように、いぶかしむように眼を細めるリク。
「そうしないこともできる」
「今日は祭りの夜だから、死にたくないよ、俺は」
「そんなの、私が決めることだ」
「機嫌を損ねたか? だったらあやまるから、な?」
「いやだ、と言ったらどうする?」
 だだをこねるように、聞き分けのないことを言ってシャオを困らせるリク。シャオの顔が次第に青ざめていく。
「そうなったら、遊べないぜ、せっかくの機会なんだから」
 にらみ合うリクとシャオ。相容れないという感じがした。お互いに牽制しあい。心を許そうとしない。
「なぁ、なんか話そうぜ」
 けれど、シャオはそれが嫌だった。
「話すことなんて何にもない」
 アキラが言ったことを守りたかった、だからケンカはしたくなかった。
「お前にはなくても俺にはあるんだよ」
「あなたの通りに従う理由なんて……」
 ぶっきらぼうに言って、リクは目を伏せた。そして言葉を止める。
「たとえばクジュがさ」
 リクは小首をかしげた、きれいに整えられた生糸のような髪の毛が揺れる。
「クジュがこんな光景を見たら、きっと悲しむだろうってこと、お前もそう思うだろう?」
 リクは顔をしかめた、シャオとよく似た鋭利な目が、一瞬かげりを帯びる。
「そうか、そうだね。私が最初に言い出したことだし……。こまったなぁ。調子が出ない」

 

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