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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season8-2

   

尾澤は冤罪となった。そんなはずはない。すべての証拠は惨殺された岬の恋人である尾澤を示している。

“ぜったいに覆ることはない”と高を括っていた。

 まさかの“DNAの不一致”。犯人と争ったと思われる惨殺された岬の爪に挟まっていた皮膚、それが尾澤と一致しなかったのだ。

 ほかの証拠のすべてを覆す、それは氷室を否定されたことになる。

 最終的に決めたのは火守探偵だ。汚点は火守にあると周囲の警察関係者、探偵事務所の面々もそう見ていた。

 政木警部に釘を刺され、必ず尾澤が犯人である証拠をみつけ、監獄に落とすと誓う。

 探偵事務所にもどり、ほかの探偵たちに協力を仰ぐことにした。

 批判的な周囲の視線に、これまで氷室探偵の右腕と称された貫禄は色褪せていた。
 大見得を切った以上、恥を忍んで頭を下げる火守。

 立ち上がったのは、仲間が困っているのなら、しかもプライドの塊のような男が救難信号をだしている。キライな相手でも探偵事務所の危機でもあると、手を差し伸べるのは筋。
 御影は決意した。

 助力をする御影に火守は、足をひっぱるなと、留意する。

 事務員のパートナーで恋人の斉藤は、このふたりうまくいくわけない、と思った。

 

 冤罪。

「なに冤罪って、裁判前に冤罪が決まっただと?」火守は政木警部に歩み寄る。

「驚いたのはこっちよ。氷室探偵はいったいなにをみていたのかしら、まさか誤認逮捕になるとは──」政木警部は頭をかいた。

 遺体となった岬の指の爪の間から、犯人に襲われたとき引っ掻いたとみられる皮膚が付着していた。これが動かしようのない犯人を示す証拠として氷室は核心していた。

 そのDNAは岬の恋人である尾澤だと視立てていたが、まさかDNAの不一致と結果が出た。

 犯人は尾澤ではなく、別にいる。ということになってしまった。

 数々の証拠が出るなか、そして罪状が次々重なっていくもDNAの結果ひとつで大きく覆ってしまった。

 氷室探偵ではなく、いまは火守探偵が受け持っている案件だったため火守の汚点となってしまった。

 火守は愕然とした。氷室探偵の証拠を検証するべきだった。自分なりの立件までできるかどうかの視立てをいまいちど火守探偵としての探偵の目で見極める必要があった。

 氷室名探偵の引継ぎというだけで信じてしまった。それだけの信頼における人物だ。氷室という男を疑う余地はない。

 あるとしたら犯人の捏造。尾澤がなにかしろのトリックを用いたにちがいない。

「待ってください。すべての証拠が尾澤を指している。DNAの結果が一番の証拠かもしれないが、それを捏造、人為的に細工したことも考えられる。まちがいはない。ぜったいに──」火守はリスペクトしている氷室探偵をやはり疑うことはできない。心底信じていた。

「だれに言い訳しているのよ。DNAが不一致。動かしようのない事実。潔白なのよ」政木警部は愕然としていった。

「言い訳なんてしてない。火守探偵はしっかりと調査しています」斉藤は事務処理を放棄してついてきていた。

「事務員でしょ、あなた」政木はにらんだ。「どういう関係かまでは詮索しないけど、火守探偵をかばいだてしたところでこの猟奇殺人事件は振り出しになったの。ここから真犯人を捜しだして逮捕しなければならない。氷室探偵が調査した時間も、集めた証拠も無駄になったの。すべてが徒労に終わったのよ」

 斉藤は言い返せない。彼女としても、事務員としても、サポート役としても、ひとの上に立って指揮するような立場にいない斉藤事務員では、どれだけ立派な主張も、言い訳になってしまう。

「だいじょうぶ」斉藤をかばう火守。「おれはまだやりますよ。氷室探偵が見抜けなかったのだとしたら、おれが見抜いてやる。これまでの経験は氷室探偵にだって劣るとは思ったことはない。やってみせる。だからおれに調査をつづけさせてください!」

 火守は政木警部に懇願した。頭を下げて。

 そばに彼女の斉藤のまえで。みっともない。情けない。そう思われてもしかたがない。すがるように上の立場の者に頭を垂れる姿をみせたくもなかった。

 斉藤は黙っていた。

「わかった。期待している」政木警部は火守探偵にいった。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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