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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season8-5

   

 証拠としてあがっていた毛髪。科学的に調べた結果のデータを見ると、尾澤の毛髪とはまったく異質だった。

 その毛髪の特徴もあった。栄養欠乏。枝毛や清潔感がない。

 その髪質からして日常において貧困である環境におかれている人物を思い浮かべる。

 御影は気づいた。犯人が細工した犠牲者がいることに。

 火守たちは尾澤のマンションの前で本人と対峙する。誤認にいたったことで謝罪をしにきたわけではない。尾澤の雰囲気を探るためだった。

 御影のもつ探偵の目であればなにかが見える可能性があった。それも踏まえての対面だった。

 尾澤は監視下にあったが、その警察の監視を逃れ、単独行動をした。ある人物に会うためにだ。

 そして、翌日。

 新たな遺体が発見され報道された。

 

 火守が政木警部に連絡して、毛髪について詳しいデータを知りたいと願いでた。

「どういうことかしらね」政木は火守の要請をどうすべきかと考えていた。

「でも、尾澤ではないんだから、いまさら詳細を教えてもしかたないですけどね」伯田がいった。

「ほんとうにあの探偵たちでだいじょうぶですか? 氷室名探偵がいないんだから、われわれで捜査したほうがいいのでは?」黒川が生意気なことをいった。

「なら、あなたは解決できる頭があるわけ?」政木警部は部下の力を信じられずにいた。

「とりあえず詳しいデータを、火守探偵にメールするわ。わたしたちは地取り捜査からはずれるわけにはいかない」政木警部はいった。

「聞き込みくらい所轄や派出所に任せればいいんじゃないすか?」黒川がまたしても生意気なくちを叩いた。

「あなたはひとりでできるの?」政木警部はまたしてもなじった。

「いえ、できないっす」黒川はうつむいた。

 政木警部は火守探偵にメールをした。

 30センチほどの毛髪。男性。年齢は30代。日本人。色は黒。だが、毛先10センチのところはブラウンの色に染色した形跡がある。毛根から20センチのところまでは黒色。

「長さからして尾澤ではないのは明白だ」火守がいった。

「斉藤さんがいったとおり男性でしたね。お見事」御影はほめた。

「あら、ありがと」微笑を浮かべた斉藤だった。

「おい、つぎの文章が驚きだ」火守がいった。

“栄養欠乏。毛髪は枝毛、切れ毛が目立っている。脂、埃の付着がひどく、何日も洗髪していない状態である”。

「そういうことかよ!」御影は吠えた。

「ああ、そういうことだ」火守はうなずいた。

「なに、どうしたの、犯人がわかったの?」斉藤がふたりにきいた。

「犯人というより」火守は御影をみた。

 うなずく御影。「尾澤が逃れるために替え玉を仕込んだ犠牲者がいることがわかったってことですよね」

「犠牲者?」斉藤は引いた。

「とりあえず政木警部に教えよう。確証はある。この毛髪のデータが物語っている。ただこの毛髪の人物がどうなったかはわからない」火守がいった。

 御影は確信をもっていう。「替え玉にされたその人物は殺されているでしょうね。毛髪だけ採取したとは考えにくい。ここに連れてきて岬同様に殺したと考えざるをえない。それに、たとえ発見されても身元は不明だ、好都合な人物だ」

「なぜそう思う?」火守は見当もつかなかった。「遺体が見つかれば身元はわかる。さすがに警察の捜査でわかると思うが──」

「時間はかかるでしょうね」御影はいった。

 火守は御影の目を見つめていた。なにかべつのものが見えている。そんな目の輝きを放っていた。

「それが、探偵の目、プライベートアイから見える世界か」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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