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SF・ファンタジー・ホラー

ウパーディセーサ〈五〉

   2016年2月24日  

ありがとう! ◯◯ちゃん! ちゃんと勉強したら僕も九十五点取れるかな? ◯◯ちゃんの父さん、今日も遅いんでしょ? うちでご飯食べてくよね?

 

 
 力はない。でも、手段ならあるかもしれない。そう考えながら、歩いていると。さっき宮守が言っていた厨房室らしき扉の前に立っていた。宮守との会話で少し喉が渇いた。コーラなんかあれば! と扉を開く。

「わっ! ビックリした!」

 扉を開けるとそこには鏡が扉の淵、ギリギリの所に立っていた。引きドアでないと確実に鏡の額に当たっていただろう。
「鏡! 探してたんだ。聞きたいことがあって……」
 と、話すうちに聞きたいことを忘れていた。
 ドン! と僕に鏡がぶつかった。まるで猛獣の様な目付きで僕を睨みつけ、無言で客間の方へと歩いて行く。いつもの鏡じゃない! 何か違う…… 何かを思い出しそうになった僕は急に頭痛がし、その場で倒れてしまった。消えゆく意識と同時に違う景色が浮かんできた。

「眇寨君《びょうさい》! テスト何点だった?」
 赤いランドセルの女の子が嬉しそうに僕の手を繋ぎ、元気良く振った。
「うーん。算数は苦手なんだ……帰ったら母さんにしかられるよぅ」
 僕はうつむいて、少し涙混じりで答えた。
「ちゃーんと予習復習しないからだよ! あたしなんて、九五点だもん。大丈夫だよ眇寨君! あたしが一緒に眇寨君のお家に行って、教えてあげる。だったらきっと眇寨君のママは怒らないでしょ?」
 満面の笑みを浮かべながら、赤いランドセルの女の子は立ち止まって僕の両手を取り、僕の顔を覗き込んだ。
「ありがとう! ◯◯ちゃん! ちゃんと勉強したら僕も九十五点取れるかな? ◯◯ちゃんの父さん、今日も遅いんでしょ? うちでご飯食べてくよね?」
 憂鬱な帰り道だったのが一転、怒られる心配がなくなった僕はスキップしながら大きく繋いだ手を振った。
「うん。パパは今日も遅くまでお仕事だって。ありがとう。あたし、眇寨君のおかげでいつも寂しくないよ!」
 ニッコリ僕に笑いかける女の子。そこで僕は何かを見つける。急いでそれを拾い上げた。

(おい! 眇寨! 大丈夫か、しっかりしろ! )

 

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