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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode39

   

 事件の真相を知った後、魔夜の中で一つの決心が生まれた。

 本格ミステリー『44口径より、愛を込めて』

 

「第一次、第二次虐殺事件被害者より、ヘロインが体内から検出された者の名前と、対象となる被害者が通っていた病院を一覧にしたリスト。日向野の患者リストと松野婦長の担当患者リスト。日向野と松野婦長の担当業務や業務の流れ。日向野と松野婦長、坂下、色摩、賢木田の年収証明書類のデータ、銀行口座の入出金履歴、それぞれの会社の確定申告書類のデータ。坂下及び色摩に接触した人物のリスト、賢木田組員リストと車屋の顧客リスト。二つの倉庫に出入りしている人物のデジタル写真、その写真を撮影した日時。そして、倉庫内の写真とその中に並べられた自動車の内装をバラした写真。これらが丁寧に解りやすくまとめられ、更にホルダー分けされ、保存されていました。これらの情報が警察の手に渡れば、逮捕は免れない。だから、逮捕への決め手となる決定的証拠を掴んでしまったケンさんを殺害した。だが、丸井さんを使ってみても、ケンさんの掴んだ証拠どころか捜査情報が見つからない。とすると、隠滅される訳にはいかない証拠が隠されているはずだ。事件解決からは遠く、事件から近く、近い存在に隠されているのではないだろうか。そこで、魔夜さん達に託したと、考えたんでしょう」
「この事件って」
 私が言いかけた台詞を、陽太君が代弁する。
「そう。全ては、虐殺事件よりずっと以前から仕組まれていたんです」
 ぞっと、した。
「実に巧妙です。ヘロイン密売を、自分達と無関係な外国人グループの仕業だと思わせる為、第一次、第二次虐殺事件を起こした。同時に被害者を保護と言う名目で確保し、警察、マトリの動きを知る為の、媒介とした。不運にもその媒介になってしまったのが、魔夜さんと大雅さんだった」
「……事件が大きければ大きい程、個人の仕業だとは考えにくくなる。かもしれないけど、でもそんな事の為に、沢山の人を犠牲にし、悲しませ、不幸にしたって言うの? それで、平気なの? 信じられない」
「沢山の人々を、ヘロインで不幸にしてきた奴らです。自分達が助かる為なら、他人がどうなろうが関係ないのでしょう。最悪は、松野婦長と色摩に全ての罪を擦り付ければ良いとすら考えていたようにしか思えません。だが、ケンさんは、その事に感づいていた。だから、松野婦長と日向野の関係にも着目していた。ヘロインについては、何処かに宙に浮いた入出金があり、そこにヒントがあると考えていたんです。それらの情報に隠されていた真実は、自動車販売に見せかけた、ヘロイン取り引きでした。何重にも密閉されたヘロインが自動車内装部に敷き詰められた写真が、マイクロSDカードに収められていたんです」
 私の中に、今まで抱えていた強いの疑問が浮かんだ。
「……松野さんは、犯人なの?」
「いいえ、松野婦長は、この事件とは無関係でしょう。日向野は松野婦長の家の合鍵を持っていましたし、週に二、三回は出入りしていた様ですが、松野婦長の方は日向野の家の合鍵は疎か、月に一、二回程度しか家に行く事はなかったようです。実際、松野婦長が亡くなってから日向野の家の合鍵は出て来ませんでしたが、友人には合鍵を貰ったと亡くなる数日前に話していたそうなので、倉庫の鍵を合鍵と偽って渡したんだと思います。松野婦長が亡くなる日の前日、日向野が彼女の部屋に入るのを見たと、隣の部屋の住人は証言しています。松野婦長の衣服から、僅かですがハロタンが検出されました。松野婦長を一瞬眠らせた隙に、彼女が生理痛で悩んでいるのを知っていて、鎮痛剤とヘロインを入れ替え、証拠となる小道具を仕組んだ。ハロタンと言えば、塚田の事件に関してですが、日向野は休憩時間に外出しています。忘れ物を取りに行くと言っていたそうですが、特に目撃者もいませんでしたし、防犯カメラにも映っていませんでした。ですから、アリバイはありません。ただ、塚田の事故した車に仕込まれていたハロタンの使用量と使用法から考慮するに、医療の心得があるものだろうと推測されます。それからヘロインが検出された患者についてですが、ケンさんの調べからすると、普段から松野婦長が患者の為に用意した薬を、日向野が必ずチェックしていたようです。薬の出し間違いを防ぐ為だったそうですが、一部の患者の薬をヘロインとすり替えていたと考える事も出来ます。同じ薬を欲しがる患者は多々居たと、在職中の看護師は証言しています。日向野が休暇時、看護師の判断で薬を出すと、患者から違うと言われる事もあったそうです。この時、日向野の代わりに薬を確認していたのが松野婦長だったそうです」

 

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