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SF・ファンタジー・ホラー

ウパーディセーサ〈六〉

   2016年2月26日  

 お前が来る少し前の頃、小学二年生位。俺、仲のいい女の子が居たんだ。いつも手を繋いで夕焼けを見ながら一緒に帰ってた。でもある出来事をきっかけにその子のこと、忘れたんだ……俺だけじゃなく、クラスの皆や先生まで。そんな事ってあるか?

 

 
「眇寨君、なんで? なんで私…… 」

「眇寨君、なんで? なんで私を……」

「眇寨君、なんで? なんで私をこ……」

 うわぁ! と僕は叫び、目を覚ました。冷や汗がベッドに浸みて湿っている。今のは一体なんだったんだ? 黒くくすんだ顔の少女がずっと僕に問いかけていた。
 僕にとっては何故かとても気味が悪かった。いや、まだ気分が悪い。何か飲み物を…… あぁ、また厨房室か。壁伝いにドアまでたどり着き、ドアを開くと……
 昨日と同じ。朝の光景が目の前に広がっていた。朝餉の香りと共に、食器の重なる音が聞こえてきた。良かった、悪夢は去った。やっと手足に血が通いだし、ぼうっとしながら客間へとたどり着いた。取り敢えず飲み物を、とフラついていると緋多が心配そうに声をかけた。
「おはよう。なんだか顔色が良くないよ。大丈夫? 何かとってこようか?」
 取り敢えず緋多の厚意に甘えることにした。近くの席に座り、机の上で腕組み枕を作りうつむいた。
 緋多はスープとコップ一杯の冷えた水を持ってきてくれ、蒼ざめた僕の顔を心配そうに眺める。僕はコップに口をつけ、一気に飲み干した。冷えた水が食道を通り、胃に冷んやりとした感覚が伝わって来る。やっと話す気持ちになった僕は、緋多に黒くくすんだ顔の少女の事を話した。
「眇寨君、少し考えすぎなんじゃないかな。悩み事なんかがあるとその夢を見たりするしね。取り敢えず、平山さんの開発が終わるまでユックリしなよ!」
 緋多はにっこりと笑顔を見せた。確かに考えすぎかもしれない。温かいスープをちびちびと飲み、自分に言い聞かせた。
「たまには外に出歩くのもいいかもしれないよ。こんな窓もない地下室でモニター眺めてちゃ、気がめいるよ。そうだ、このIDもってきなよ! いざという時の為に」
 緋多はポケットから免許証を取り出した。〝山寺剛〟そう書かれてある偽造の身分証だ。僕に似つかわしくない名前だけど、持っていないよりはましみたいだ。しかも写真は僕の顔だ、密かに緋多は全員分作っていたらしい。
 確かにこの二日間、お日様に当たっていない。焦響《しょうきょう》の家も近いことだし、顔を出してみることにした。
 緋多にモニターをチェックしてもらい、出入り口付近に人がいない事を確認し、あの厳重な重い扉を開け外に出た。

 

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