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ショート・ショート

さよならの日

   

 卒業式に幼馴染が飛び降り自殺をした。もし彼女の異変をきちんとわかってあげられたら救える命だったはずだ。

 

 
 本当は救える命だったと思い出す。

 最後に向けてくれた満面の笑みには邪気などなかった。今の環境に、境遇に、人生に、世界に、微塵の不満もないかのような。実際、何も知らない周りの人たちには、彼女に何か抱えているものがあるようには見えなかったと思う。聞かされるまで私も知りようがなかった。まさか彼女に限って。

 違う。

 私は聞かされても信じなかった。冗談好きの彼女のことだから、少々たちの悪いいつもの冗談なのだろうと思っていた。
 けれど最後に向けてくれた笑顔の直後、無表情に切り替わった顔を目にしたときにようやく気がついた。本当だったのだと。
 そして自分はなんて愚かな人間だったのだろうと。

 三月二日、A高校卒業式。笹本優香が屋上から飛び降りた。

 

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