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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season8-9 END

   

 真犯人に仕立て上げられた人物は、浮浪者だった。身元もわからない。存在しているが、存在しなくなっても気づかれない。
 身代わりにうってつけての人物だった。

 毛髪の傷み具合にはそういう背景があったのだ。

 証拠はどんどん見つかっていく。氷室探偵も、この浮浪者の遺体の発見に至るまでの時間経過を待っていたのかもしれない。だからなにも言えずにいた。

 尾澤の冤罪の裏付けなどすでに見抜いていたのだ。

 だが、見事に火守探偵たちは意識していないが、協力して力を合わせてこの難問を乗り越えた。

 ついに尾澤は自供しはじめた。

 彩は愛があっての交際だと思っていた。だからすべてを捨てても一緒になることを考えていた。

 尾澤はちがった。社会性と将来性を考えていた。愛はあったかもしれない。それは裕福で医者という世間体にも信用されている家庭の中に潜り込むためだった。

 ギャンブル、麻薬売買に手を染めて不安定で危うい暮らしに後ろめたさがあった。

 それを危惧しての犯行だった。

「第八シリーズ完結」

 

 キャリーバッグを開く。身代わりの浮浪者が詰め込まれていた。

「こいつが主役だからな」尾澤はそういうとキャリーバッグから体を引きずり出した。

 浮浪者の毛髪を二三本むしり室内に散らした。物取りや金品の強奪のために不法侵入したと思わせる。ナイフの握りの部分は布で拭った。浮浪者の右手を握らせ、これで岬を惨殺したナイフの握りには、浮浪者の指紋がついた。

 これでしかも岬の手を持ち一本一本に浮浪者と争った形跡を残すため、顔に爪を立てた痕を残した。

 浮浪者の顔や腕や首周りに岬が立てた爪の痕が残った。爪の間には剥がれた皮膚がついていた。

 これで岬を襲ったのは浮浪者である。DNAの検査もこれで尾澤とは不一致になり、容疑は晴れることまで計算していた。

 ここまでやるのには尾澤と交際していた岬は、この部屋に出入りしていることはいうまでもない。そのため、毛髪や指紋が採取させることは明白。

 これだけの猟奇的惨殺が起きれば、一番に疑われるのは交際相手というのがセオリーとなる。

 それすらも考慮して浮浪者をフェイクの材料にした。最後に岬と争ったのは浮浪者であると。

 まんまと弁護士や検視官などを欺いた。DNAという現代で信用できる一番の証拠であることを逆手にとったの偽装だった。

 偽装工作を終えた尾澤は、浮浪者をキャリーバッグに再び詰め込み部屋を出た。浮浪者は細身の男だったため、軽く運べた。170センチほどの細めの体形だ。それは尾澤と良く似た背格好だった。

 部屋を出るとき、再び同じ帽子を被ってマンションを出た。監視カメラには単なる住人として映っているだろう。

 警察が調べても、どこかの部屋の住人でしかない。監視カメラの映像には証拠にはならない、と確信していた尾澤だった。

 これが完全殺人の全貌だ。

 氷室は見抜いていた。遥かに難易度が低くなった犯罪者に、もはや氷室が助言をするまでもなかった。

 レンタカーは掃除して返却した。

 尾澤の部屋にはキャリーバッグが隠されていた。浮浪者が詰め込まれていた痕跡がじゅうぶんにあった。衣服の汚れや、毛髪が採取された。

 動かない証拠だ。このままではいずれバレる。あとは浮浪者の遺体を山に棄てるだけだった。

 まさかこのキャリーバッグがこうも速く発見されるとは思ってもみなかったのは尾澤だろう。

 尾澤のぬかりはこの一点にあった。おそらく氷室探偵は、この通報の電話を待っていたのかもしれない。

「これが岬殺害の犯行の真相だ」御影はいった。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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