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SF・ファンタジー・ホラー

ウパーディセーサ〈十〉

   2016年3月8日  

 最近ね、うちの子の喘息が酷くなっているの。おかしいなと思っていたら昨日公園でお前が猫と戯れているのをみたの。だからね、保健所に連絡して連れて行ってもらったわ。喘息ってね、とってもとっても苦しいのよ

 

 
 人は誰しも幸福を望む。しかし手に入った幸福はいつしか不幸になる。
 だったら、幸せとはその場しのぎのまやかしなのだろうか。
 アルコール依存症者が、求めるように。
 麻薬中毒者が崩れて行くように。
 幸せを求める者はいつしか我を失っているのかもしれない。
 飽きが来ない物なんてない。幸せにも飽きが来るんだ。人々は平気で幸せをも捨ててしまう。
 吸い殻を捨てても、拾って吸うことができる。
 残飯を捨てても、漁って食べる事ができる。
 でも、拾った幸せで幸せにはならない。だから俺は幸せに浸っている奴が大嫌いだ。
 両親の愛情を沢山受けながらも、不満気な表情で街を歩く若者。誠心誠意尽くしてくれる優しい彼氏がいるにも関わらず、それを幸せと感じずに高望みする女。この大都会に巣食うほくそ笑む悪魔。人間なんて、誰も信用出来ない。
 コンクリートの高層ビルが立ち並ぶ繁華街。ビルの暗い隙間に俺の家がある。立派な家だ。なんたって改築に金がかからない。防寒性に優れた最高の素材だ。
 部屋の壁に直径一センチ程の穴を開けてみた。俺専用のシネマ館だ。
 ビルの隙間から見える夜のネオン街。酒に酔ったオッサン達は肌を露出した女に目を奪われ、黒いベストを着た男が店内へ誘う。小一時間程経って、オッサン達はスッキリした表情でまたフラフラと夜の闇へと溶けてゆく。
 あと少しで日の出という刻、ピンクのワンピースを着た女が注射針を片手に下着を露わに、階段で倒れている。
 泥酔した女は俺の家の前でゲロを吐き散らした。
 何て素晴らしいんだ。この穴は人間の醜さを映し出す投影。
 何てくだらないんだ。人間なんて、やがて死ぬだけの灯影。
 俺には親が居ない。本当の名前も無い。生まれた時に俺を捨てた。いろんな家をたらい回しにされたが、どこの家でも邪魔者扱い。

 

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